大規模な“ドブ板営業”
キャッシュレス決済サービスと携帯電話という先進的なITサービスだが、両者に共通する成功要因の一つが意外にも“ドブ板営業”であるとの見方も多い。PayPayのサービス開始当初の活動について大手キャリア関係者はいう。
「ソフトバンクは数千人におよぶ営業担当者を投入し、個人経営の店も含めて全国津々浦々の小規模な小売店や飲食店などに一軒一軒、飛び込み営業をかけていった。当初は店側の手数料は無料に設定していたので、加盟店はうなぎ上りに増えていった。数年たって加盟店数と登録ユーザ数が一定レベルに達して知名度が高まったところで、それを活かして今度は全国規模のチェーン本部やプラットフォーム企業に営業をかけていった。そして現在では、ユーザの購買データを利用して、囲い込んだ加盟店や企業に対してクーポン利用などの提案を行い、付加価値の部分でも稼ごうとしている」
一方、楽天モバイルについて別の大手キャリア関係者はいう。
「サービス開始当初はとにかく基地局を増やすことが最重要課題だったため、楽天G内の各社から営業をやっていた社員などをかき集めて、携帯事業のずぶの素人だった社員たちを短期間で教育して、基地局を置かせてくれる場所を開拓していった。その結果、開始からわずか2年で人口カバー率98%を達成した。
また、契約回線獲得の面では、楽天市場をはじめ楽天Gが手掛けるサービスに加盟する法人に積極的に営業攻勢をかけ、三木谷浩史社長も自らトップ営業をかけたりと、まさにドブ板営業を展開している」