東西冷戦時代には米ソ両国ともにサイキック研究が盛んに行われていたことが公開された機密文書の数々からわかっているが、1980年代末のソ連国防省内には「10003部隊」と呼ばれる“サイキック部隊”が存在していた――。

■ソ連末期に存在した“サイキック部隊”

 冷戦下におけるサイキック研究の進展により、アメリカをはじめ軍当局が“サイキック部隊”を新設していることを知り危機感を覚えたソ連当局は1980年代終盤、超能力を軍事分野で使用する可能性を模索すべく「10003部隊」と番号が振られた新たな極秘部隊を編成した。部隊の指揮は、すでに超常現象を研究していたアレクセイ・サヴィン大佐に託された。

 当初はメンバーが10人しかいなかったにもかかわらず、この部隊の運営には多額の資金が必要で、政府から多大な財政上、政治上のサポートを得ていた。

 ソ連崩壊後の1994年から1996年にかけて勃発した第1次チェチェン紛争に「10003部隊」が出動し、サヴィン大佐によれば、彼の部隊は地雷原を発見、攻撃を警告し、敵の指揮所を発見したという。これらの功績により指揮官は中将に昇進した。

 1997年、「10003部隊」はロシア軍参謀本部の管理下となり、「人間の異常な能力と特殊な種類の武器に関する専門分析総局」として知られるようになった。

 2人の少将と8人の大佐が勤務し、基地には合計約50人が勤務していた。その半数は民間人で、120を超える組織や機関がこのプロジェクトに参加していた。

 1998年、ロシア科学アカデミーのノーベル賞受賞者ヴィタリー・ギンツブルグ氏の発案で、疑似科学と科学研究の改ざんと闘う委員会が設立された。「10003部隊」には多くの注目が集まり、この部隊の活動に関する研究結果に基づいて評決が下された。非科学的な専門家部門の活動は委員会委員長E.P.クルリアコフによって批判され、その結果、「10003部隊」は2003年末に解散となり、サヴィン中将は2004年に辞任した。

冷戦時代の闇に葬られた超能力部隊「10003」驚異の能力と極秘任務とは
(画像=サヴィン中将 画像は「espaciomisterio」より,『TOCANA』より 引用)

 かつてのインタビューでサヴィン中将は「10003部隊」の目的について次のように語っている。

「我々の目標は、アメリカとNATO諸国のサイキック戦争プログラムを分析し、敵に対してエネルギーおよび情報によるインパクトを与える方法を開発し、我々の陣営の指導者たちをサイキック攻撃から守ることなどでした」(サヴィン中将)

 この目的のために部隊は、世界中の様々な心理学的テクニックと超能力的なスキルを研究していたのだった。

「10003部隊」は取り潰しとなったが、隊員の多くは特殊部隊とFSB(ロシア連邦保安庁)に再配置された。

 その動きに注目したコラムニストのニコライ・ポロスコフ氏は「10003部隊」のメンバーが“サイキック部隊”として温存されている可能性を指摘し、2019年2月にロシア国防省の機関誌『Armeyskii Bulletin』に寄稿した「未来の戦争のためのスーパーソルジャー」と題された記事で解説している。

 ポロスコフ氏によればサイキック兵士は「メタコンタクト技術」という一種のテレパシー能力を獲得しており、敵の頭の中を見透かすことができるために、敵の作戦行動を先読みしたり、敵が隠れている場所を察知することができるという。

 記事によると、実験中、施錠された金庫に保管されていた理解できない言語で書かれた文書を読み取ったり、テロネットワークのメンバーと思われる人物を特定することができたという。

 はたして現在のロシアに“サイキック部隊”は存在しているのか。存在するとすればウクライナでの戦闘に投入されているのだろうか。もし極秘裏にすでに投入されていたとしても外からうかがい知ることはできそうもない。いずれにせよ少なくとも現在の軍事紛争が幕引きを迎えるまでは“真実”に近づくのは難しそうだ。

文=仲田しんじ

提供元・TOCANA

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