ヨルダンの首都アンマンの旧市街を見下ろす丘にあるアンマン城。ヨルダン考古学博物館や東ローマ帝国時代の教会跡など、ヨルダン観光においては、このヨルダン城址は欠かせないスポットであるが、特に注目したいのがヘラクレス神殿である。
■アンマンにある謎の巨大ローマ神殿
西暦162年から166年にかけて、ローマ帝国の第16代皇帝マルクス・アウレリウス・アントニヌスによって建造されたこの神殿には、巨大なヘラクレス像があったという。このヘラクレス神殿には、6本の柱が残されており、その柱の高さは10メートルにも及ぶ。東側に並ぶその6本の柱は30メートル×25メートルの祭壇を構成する一部であり、神殿そのものは、約120メートル×72メートルにもなる。
実際、この神殿はローマから離れたアンマンに建造されてはいるが、ローマにあるどの神殿よりも規模が大きい。そして、世界の七不思議のロドス島の巨像ではないが、この神殿には巨大なヘラクレス像があったとされる。
専門家たちの調査では、この神殿外郭部に残されている柱にはあまり装飾が施されておらず、実は未完成のままだったのではないかと推測されるなか採掘がすすめられ、なんと大理石でつくられた巨大な左手の指と、肘と、まき散らかされたコインが見つかったのである。つまり、神殿そのものは未完成だったのかもしれないが、そこには巨大なヘラクレス像があった証拠がみつかったのである。
永い歴史の中で、地震などの災害により、巨像は倒壊し、大理石製の身体のほとんどは、都市アンマンの建築資材などに流用されてしまったと考えられるが、その一部である指と肘だけはかろうじて残されていたのだ。指の大きさから推定されるヘラクレス像の大きさはなんと12メートルを越え、大理石製の像としては、歴史を通じてみても最大のモノであったであろうとされる。実にマンションの4階部分にあたる高さの大理石の像なのである。
ギリシャ神話で全知全能神ゼウスの息子で最強の半神半人であるヘラクレス。その指のたくましさは、なんとも見ごたえがある。きれいにそろえられた爪と甘皮、おそらくヘラクレスはマニキュアをしていたのではないだろうかとの推測さえでてくるような美しい仕上げである。ヘラクレス像そのものは失われてしまったが、残された指は、その巨像を想像し、歴史のミステリーを脳内で再現するための歴史的遺物として価値ははかりしれないものなのであろう。
文=高夏五道
提供元・TOCANA
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