銀行への帰属意識が薄れてモラルが低下

 本件や野村證券の事案のほか、10月には金融庁に出向中の裁判官が業務で知った企業の内部情報をもとに株取引を繰り返すインサイダー取引を行っていた疑いで、証券取引等監視委員会が金融商品取引法違反容疑で調査を行っていることが発覚。同月には、東京証券取引所の社員が未公表のTOB(株式公開買い付け)情報を公表前に親族に伝え、親族が不正に株取引を行っていたとして監視委が調査をしていることが明らかとなった。金融業界でこうした不正は増えているのか。

「以前と比べて金融機関の職員による重大な犯罪・不正行為は増えているという印象があります。まず、業務の効率化に伴い一支店あたりの人員は減少して一人当たりの業務量が増えており、加えて中途採用で入行してくる人も増え、転職がより当たり前になっているため、一人ひとりの行員の銀行への帰属意識が薄れてモラルが低下しているという背景があると感じます。大手銀行の利益が過去最高水準になっている今、金利も上昇して稼げる環境ができつつあり、銀行で働く行員の業務はますます忙しくなっていくでしょうから、不正行為が発生する余地が大きくなりつつあるといえるのではないでしょうか。銀行の業務ルールや検査は基本的には性善説に立っており、その抜け道をつくような不正が増えれば、ルールを大きく見直す必要も出てくるかもしれません」

(文=Business Journal編集部、協力=森岡英樹/金融ジャーナリスト)

文・MOBY編集部/提供元・MOBY

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