フランス西部とスペイン北部に暮らす謎の被差別民「カゴ」とは――。社会的に孤立したまま閉ざされたコミュニティで暮らし、歴史が記録されることのない営みが1000年以上も連綿と続いていたのだ。
■ピレネー山脈の謎の被差別民「カゴ」とは?
カゴ(Cagots)はピレネー山脈に1000年以上存在していたが、彼らは周囲から不可触民と見なされて社会的に孤立していた。
カゴの起源については、聖書のユダの子孫、中世の堕落した大工の教団、カタリ派やアリウス派、最古のキリスト教徒から派生したなど、さまざまな説がある。
正確な民族グループは不明で、ゴート族、アラブ人、あるいはユダヤ人である可能性があり、最も顕著な特徴は何世紀にもわたる抑圧と栄養失調の結果としての背の低さだ。さらに耳たぶがなく、指の間に水かきがあるとも言われている。
16世紀、外科の先駆者であるアンブロワーズ・パレがカゴの人々を研究し、背の低さ、体温の高さ、青い血、遺伝的奇形になりやすいことを指摘している。
フランス社会は何世紀にもわたって彼らを理解できず、彼らは知的障害者なのか、人食い人種なのか、ハンセン病患者なのか、魔術師なのか、逸脱者なのか、異端者なのか決めかね混乱していた。19世紀のフランスの医師は、彼らを独自の人種として分類したほどだった。
彼らはいかなる形態の農業も禁じられ、その役割は墓掘り人、死刑執行人、棺桶作り、その他の葬儀関連の仕事に限られていた。
彼らは一般の人々と食事をしたり、結婚したり、共用エリアで入浴したり店舗に入ることを禁じられ、公共の水汲み場から水を飲むことも、食べ物や家畜を扱うことも、製粉所に入ることも許されなかった。
疎外されたグループとして、彼らは裸足で歩くことを余儀なくされ、街の柵に触れることも許されなかった。こうした差別はフランスとスペインの地域で20世紀まで続いたのである。
このようにカゴは不可触民であり、当時は人間とはみなされていなかった。ヨーロッパではこの過去を直視せずに忘れようとし、議論を避ける傾向があるという。カゴのコミュニティは20世紀半ばまで存続したが、徐々に消滅し形骸化して今日に到っている。
彼らは自分たちのアイデンティティをよく知っているが、彼らがこの情報を共有することを厭わない限り、誰も彼らについて知ることはできない。その詳細が謎のままカゴは歴史から忘れ去られてしまうのだろうか。“自由の国・フランス”の歴史の別の一面を垣間見せられているのかもしれない。
文=仲田しんじ
提供元・TOCANA
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