子ども子育て支援金制度には大きく3つの問題点がございます。第一に「社会保険料の目的外利用である」という点であります。

2008年、後期高齢者制度が始まる際、「誰しもが高齢者となりサービスを享受しうる」という理由で、現役世代から高齢者への支援金が創設されました。今回も同じような連帯の観点から高齢者を含む全世代から子どもへの支援金制度が創設されますが、高齢者が再び子供になることはないのですから、同じ理屈で制度を拡張することには無理があると断じざるを得ません。

委員会では「子どもが増えれば将来的に税収が上がる」ことをもって被保険者の受益となるとの説明もありましたが、そのような理屈で社会保険料を徴収できるのであれば、今後どのような名目にも「社会保険料」の使途を拡大できることとなります。

第二の問題点は「社会保険料を財源とすること自体が少子化対策に反する」というものであります。

社会保険料に上乗せする政府与党案について、社会保険料は一定収入で負担が頭打ちになるため逆進性がつよく、現役世代の中間所得層に特に重く負担がかかることは委員会でも、再三ご指摘した通りであります。結婚、出産に臨むべき世代の可処分所得を圧迫することは、少子化を反転させるどころか、少子化を加速しかねません。

もちろん、政府がその社会保険料について所得だけでなく、資産も含めた応能負担を検討していることは承知しておりますが、検討ばかりで一歩も前に進んでおりません。真の応能負担に必要不可欠な、「預貯金口座へのマイナンバー付番」についても全く議論が進んでおりません。

岸田総理も「社会保険制度の持続可能性の観点から、全ての国民がその能力に応じて負担し支え合う全世代型社会保障の構築が重要である」と繰り返しおっしゃっていますが、口で言うばかりでそのためのリーダーシップは全く発揮されておりません。

第三の問題点は、増税ならぬ「増保険料」ばかりを急ぎ、少子化傾向の反転に向けた総理の覚悟が見えないことであります。私たちは、国民一人一人の結婚や出産に係る人生の選択が自由であることは当然でありますが、その上で、国としての長期的な人口ビジョンなくして、加速化プランの実質的な成功はないと考えております。政府の目標は「結婚・妊娠・子ども子育てに温かい社会の実現に向かっている」と思う人の割合を現状の27.8%から引き上げようといったものにとどまっています。

他方、どのようなエビデンスに基いて積み上げられたのか全く分からない、3.6兆円という予算の金額のみが先行し、そのための増税ならぬ増保険料だけが具体的に決まっていくと言うのは本末転倒ではないでしょうか。そもそも、少子化対策に明確な正解はなく、世界の国々が試行錯誤、トライ&エラーを続けているのが現状です。そうした中で、恒久的な財源を確保するための支援金制度の構築を急ぐことに合理性はなく、国民の理解を得ることもできません。

こうした観点から私たちは、子育て支援に関する施策の負担と給付について抜本的に見直しを行い、その見直しが行われる間の財源については

一つ、国会議員の定数の削減をはじめとする行政改革による出資の削減等、歳出の削減を図ること。 二つ、国の扶養資産の売却によって歳入を増やすこと。 三つ、その他に足りない分は特例公債の発行すること。

この3つを代替の財源とした修正案を提出いたしました。

我々国会議員が、先頭を立って身を切る改革を実践し、財源を見出す覚悟を示す必要があります。私たちにはその覚悟がございます。2028年までにしっかりと議論し、恒久的な措置を検討していきましょうではありませんか。

今回、政府与党が数の力でこうした問題の多い制度を規定した法案を仮に可決するとしても、私たちは来るべき選挙でしっかり力をつけて、近い将来必ず支援金制度を廃止に追い込むことを国民の皆様にお誓いして反対討論とさせていただきます。

編集部より:この記事は、参議院議員、音喜多駿氏(東京選挙区、日本維新の会)のブログ2024年4月19日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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