欧米を中心に語られている都市伝説の一つに「黒い目の子どもたち(Black Eyed Kids、BEK)」がある。白目のない真っ黒な目をした不気味な子どもが心霊スポットに度々現れたり、深夜に家のドアを叩いて「中に入れて欲しい」と頼んできたり……という内容で、トカナでも何度か報じている。しかし、ここ数年で「白い目の子どもたち(White Eyed Kids、WEK)」も目撃されるようになっているという。
BEKに関する都市伝説の類型の一つは、人里離れた場所にある道路や家に子どもがたった一人(あるいは数人で)現れ、目撃者に「迷子になった」と言って「車に乗せて欲しい」、「家の中に入れて欲しい」と懇願するというものだ。多くの目撃者は子どもの目が真っ黒なことに気づいて拒否するのだが、中には家の中に入れてしまい、その後家族やペットが重病になったり死んでしまったりという報告もある。
WEKとの遭遇報告もそれらと似たようなものが多い。以下は、あるWEK目撃者の話である。
■車の窓を叩かれて……
2013年のある日、午後3時ごろ、米国南部の小さな町の商店にタバコを買いに行った男性の話である。買い物を終えて駐車場から車を発進させようとしたところ、突然窓を叩かれたという。顔を向けると、窓の外には8〜9歳くらいの男の子が一人立っていた。
「おじさん、僕迷子になっちゃったみたいです」
窓ガラス越しに少年はそう言って、窓を開けて話を聞いて欲しいと訴えた。「ご両親はどこ?」と男性は尋ねたが、その声は震えてしまっていたという。たかが子ども一人に、彼はなぜか強い恐怖感を感じていたのだ。
「両親が見つからないんです。だから車で連れて行ってくれませんか? 家に連れて行ってください。ドアを開けてくれれば乗れます」
男性は子どもを強盗の罠ではないかと疑ったというが、周囲には人影どころか車の姿すらない。恐怖心を抑えて、男性はドアを開けて少年を乗せようとしたが、もう一度その子の姿を見た時、全身の血が凍るほどぞっとした。少年の目は真っ白で、瞳孔も虹彩もなく、なのに男性を見ていたのだ。そしてよく見ると、肌も白く透き通っていたのである。
男性は急いで車を発進させた。それでも「車に乗せて、家に連れて行って」という少年の声が聞こえたという。そこからはとにかく車を走らせた。
心を静めるため、男性は自宅近くの公園で一旦停車して休憩することにした。しかし、何度か深呼吸して窓の外を見てみると、外はもう真っ暗になっていた。時計を見ればもう午後7時を過ぎていた。店から家まではほんの数キロしか離れていないのに、帰るまでに2時間半もかかっていたことになる。
運転席のドアとフロントガラスには、小さな子どもの手形が残っていたという。