ファミリーマート店内のデジタルサイネージで、あるロックバンドのインタビュー動画が流れているが、そのメンバーの一人が“間違って”本名が流されたと話題になっている。普段はアーティスト名で活動している「げんげん」が、インタビュー映像のテロップで「西川源太」と表示されており、それを見たファンが反応。げんげん本人も「ミスられて本名が出ててエグい」などとコメント。全国のファミマで放映されていることから、ネット上で大きな話題になった。反響が大きかったためか、のちに動画のテロップは修正されたが、なぜこのようなミスが起きたのか。ファミマ広報部に聞くと、意外な答えが返ってきた。

 インディー・ロックバンド「Blue Mash」のインタビュー動画が、全国のファミマ店内で流れている。Blue Mashはギター・ボーカルの優斗、ギターのげんげん、ベースの荒川ソラによる3人組で、10代限定の音楽フェス「閃光ライオット」において2023年、ファイナリストに選ばれたことから急速に注目度が高まっている。同フェスは緑黄色社会が準優勝して飛躍したことでも知られている。

 そんなBlue Mashのメンバーの一人である「げんげん」のインタビューシーンで、「西川源太(Gt.)」とのテロップが付けられており、それを見たファンがX上に「げんげんじゃなくて西川源太なのほんまにむり笑笑」と投稿。このポストは表示回数が1000万回を超えるほど拡散された。それを受け、げんげん本人も「なんかミスられてて日本中のファミマで俺の本名出ててエグい」とリポスト。

 すると、さらにX上は「絶対アカンミスで笑う」「ネタじゃないのえぐい」「人生でこんな面白いこと起きるの羨ましい」など、ファミマのミスを面白がる声であふれかえった。

実はミスではなく計算ずく?

 通常、インタビュー映像などを流す際には制作側で何重にも確認し、出演者や関係者などでも最終確認を行うはず。なぜ、このようなミスが発生したのか。Business Journal編集部はファミマの広報部に問い合わせたところ、「放映しているサイネージ広告に関しては、内容の許諾確認いただいたものを放映しております」との回答だった。

 つまり、テロップに本名が流れたのは、ミスではなく本人もしくは関係者の許諾を得たうえだったわけだ。すると、げんげん本人が「ミスられてて……」と投稿したのは、ファンの関心を引くための演技だった可能性もある。ファミマとBlue MashがSNS上で話題になることを狙って、ミスをしたように装っていたのだとすれば、非常に巧妙な広報戦略と言わざるを得ない。

 実はファミマはデジタルサイネージによる広告事業に注力している。今年3月には全国47都道府県1万店舗にデジタルサイネージの設置を完了し、「1週間で6400万人に接触可能なメディア」として効果の高い広告を出すことができると喧伝している。また、地域別に異なる宣伝ができるだけでなく、オフィス街や学校周辺といった立地に合わせた広告を流すことができるという。さらにAIカメラによる視認分析のメニューも加え、来店客の属性などを分析し、それに合わせた広告を流すこともできる。

 もちろん、広告に限らずニュースやクイズ、アート、ミュージックビデオ、お笑いコンテンツなどさまざまな情報を流すことも可能と謳っている。今回のBlue Mashの動画でも、インタビューだけではなくミュージックビデオなども流しており、テレビを見ることが減ったといわれる若い層にも自分たちの音楽を知ってもらう機会として活用していることがわかる。

 昨今、米国などでは屋外や店頭などに設置したデジタルサイネージを活用して、広告事業の収益力を高めている。ファミマも商品の売り上げだけではなく、収益の多角化の一環としてデジタルサイネージを利用している。そして今回、店内で流した広告がSNS上で大きな関心を集めることになったことから、いわばメディアミックスによる戦略が功を奏したといえるのかもしれない。

(文=Business Journal編集部)

提供元・Business Journal

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