NTTドコモのショップで、店員から高齢の親の名義を変更するように勧められたことから、父親の委任状を持って店舗へ出向いたところ、その委任状が「無効」とされたとの投稿がインターネット上で話題になっている。無効とされた理由は、ドコモが規定する様式に沿わなかったからだが、なぜそこまで委任状の様式にこだわるのか。そもそも、高齢者のスマートフォンの名義は変更したほうがいいのだろうか。直接ドコモに見解を聞いた。

 あるXユーザーが11月18日、こんな投稿をした。

「両親のスマホの名義をわたしに変えておけば、いざというときに大変じゃないですよと教えてくれたドコモに、父の委任状を持って来たんだけど、具合悪くて名前を書くのがやっとの父の委任状(名前のみ自筆)では無効だと言われて呆然」

「こんなに細かい欄にフリガナ郵便番号住所生年月日電話番号書くのは見えないし書けないし無理だと言うので、名前だけ大きく書いてもらったんだが、例えばこの委任状の様式をA3に拡大して作成して書いてもらって縮小するのも、自筆じゃなくなるからNGだと。」

「『皆さんどうされてるんですか?』と聞いたら「手を添えて書いていただくか、諦めていただいてます」だって……」

「さらに!頑張って書いてもらって出直したら、ドコモに来られないなら病院から診断書も出してもらって添えてとのこと。病院から診断書!!!ハードルが高い……」

“高齢の両親のスマホの名義を子どもに変更しておけば、いざというときに役立つ”という勧めを受け、父親に委任状に署名してもらったにもかかわらず、署名欄が小さすぎ、名前を大きく書いたところ、ドコモが規定する様式に沿わないから“無効”とされたというのだ。

 この投稿を受け、「手続き終わるまでに一体どのくらいの手間暇お金がかかるのでしょうね」「高齢になれば、小さい欄に手書きで書くなんて誰でも大変だし、高齢じゃなくても何かの事情で自分で字を書きにくい、書けない人もいる。こういう手続きの仕組みや用紙って、ほんと『”普通”の人ができると想定されたことができる人』を想定して作られてるよね」など、ドコモの規定や店員の杓子定規な対応を疑問視する声が噴出。

 また、「元気な今のうちに両親のスマホ名義私にしとこうって、心に誓いました」「ふつうに解約してしまえばよいのでは」など、元気なうちに名義変更するか、そうでなければ解約したほうがいいという意見も散見される。

 他方で、「私これしようと思ってauへ聞きに行ったら『そうすると○○と○○と○○が出来なくなります』と出来ない不便なことをいくつも並べられて、『親のスマホを子名義にするメリットは何もないですよ』と言われてやめたんですが、やっぱりやっておくべきなんですかね」「名義人が亡くなったら、診断書とか住民票に×ついてるやつとか、何なら会葬礼状でも持っていけば無料で即解約できるのに?」と、そもそも名義変更するメリットそのものに疑問を投げる向きもある。

NTTドコモに名義変更について聞いた

 そこでBusiness Journal編集部はドコモの広報担当に、高齢者の名義変更をする場合の手順や、名義変更をするメリットについて話を聞いた。

――今回の事例のように、自筆署名が難しい方、来店が難しい方の場合、名義変更はできないのでしょうか。

ドコモ広報担当「譲受者のみ来店の場合を前提に回答いたします。契約者の意思確認として委任状のご提出をお願いしております。ただし、委任状の作成については、基本的に手続きに関する委任者である契約者ご本人様に実施いただくようお願いしておりますが、身体上の理由で委任状の作成が困難とのご申告がある場合には、ご相談を承って、客観的にその事実を確認させていただくことで代筆された委任状(代筆者の情報と代筆が必要な旨の明記)での受付をご案内しております」

――そもそも、名義変更するメリットはないとの指摘もありますが、高齢の契約者のスマホを、子どもの名義に変更するメリットはどのようなことがあるのでしょうか。

ドコモ広報担当「前提として、各種手続きにおいては必ずご契約者様の意思確認が必要となりますので、高齢や病気などの理由でご契約者様が意思表示を行えなくなった場合、手続きを進めることが困難になることがございます。そのため、今後を見据えた事前対策として、ご名義をあらかじめご家族など別の方に変更するケースが考えられます」

――名義変更よりも解約のほうが簡単なのでしょうか、それとも手続きとしては同じくらい煩雑になるのでしょうか。

ドコモ広報担当「解約の場合は契約当事者と当社間の手続きになりますが、名義変更の場合は、譲受者・譲渡者・当社の三者による手続きになり、来店者によりご準備いただく書類も異なりますので、そういった意味では名義変更の方が煩雑と思われる可能性があるかもしれません」

 メリットとしては、たとえば高齢者が存命中にスマホを使用しなくなったときなどに、解約しようとする場合、本人の意思確認ができないと解約は難しくなる。そんな状況を想定すると、名義を子どもなどに変更しておくというのは、確かに役立つかもしれない。だが、本人確認と意思確認が取れること重要であって、委任状の様式などは状況に応じて変更しても問題はないはずだ。ITジャーナリストは、スマホキャリアのショップ運営の形態が、対応の難しさを生む背景にあるという。

「たとえば、ドコモショップの99%以上はドコモの直営店ではなく代理店であるため、マニュアルにない対応はしにくいという側面があると思います。委任状の様式は法律で細かく決まっているわけではないので、本人が特定の誰かに、一定の権限を委譲したことが確認できればいいわけです。しかし、ドコモから委任状の様式やマニュアルが代理店に配られ、それに従って本人確認及び意思確認をするようにと定められれば、ショップ店員は臨機応変な対応するのは難しいのではないでしょうか」

 トラブル防止のため、厳格に本人確認及び意思確認を行う必要性があるのは理解できるが、あまりにも杓子定規な対応をされると、本末転倒なのではないだろうか。

(文=Business Journal編集部)

提供元・Business Journal

【関連記事】
初心者が投資を始めるなら、何がおすすめ?
地元住民も疑問…西八王子、本当に住みやすい街1位の謎 家賃も葛飾区と同程度
有名百貨店・デパートどこの株主優待がおすすめ?
現役東大生に聞いた「受験直前の過ごし方」…勉強法、体調管理、メンタル管理
積立NISAで月1万円を投資した場合の利益はいくらになる?