これが質量を生み出す原因だとすると、ちょっと気になる問題が出てきます。
それは質量を生むヒッグス粒子は重力の問題とは関係がないのか? ということです。
多くの人は「質量が大きい=重力に強く引っ張られる性質」と理解していると思います。しかしヒッグス粒子の動きを邪魔するという性質は、この理解ではうまく飲み込めません。
こういう疑問が浮かんでしまう原因は、「質量」と「重さ」という概念を同一視してしまっている人が多いためでしょう。
そのため、質量を生む素粒子って重力子じゃないの? と思ってしまう人もいるかもしれません。
この問題を理解するためには、まず「質量」と「重さ」が異なる性質であることを理解する必要があります。
「質量」は「重さ」じゃない!
学生時代に物理の授業で「質量と重さは違います」と説明された記憶があると思います。
ただ、ほとんどの場合、質量と重さは混同して使われるため、その違いを意識する機会はほとんどないでしょう。
その理由は地球上では、この2つは特に分けて考えなくても問題がないためです。
そこでちょっと場所を変えて考えてみましょう。
例えば、月面では重力が地球の6分の1しかありません。
そのため体重60kgの人が、月へ行けば体重は10kgになってしまいます。
ではこのとき、その人の質量(物質の量)は減っているでしょうか? この人は50kgの減量に成功したと言えるでしょうか?
当然そんなことはありません。
つまり月へ行くと重さは減るけれど、質量は変わっていないのです。
けれどまだちょっと釈然としない人がいるかもしれません。
なのでもう少し詳しく質量と重さの定義について考えてみましょう。
重力の弱い月へ行くと減ってしまうということから、「重さ」とはある物質が重力に引かれる強さを表す値だと言うことができます。