てんかんの症状を抑える効果のある大麻由来の医薬品の解禁を盛り込んだ改正大麻取締法が12月12日から施行され、国内で初めて大麻を原料とする薬の使用が認められる。

 今回の法改正をてんかんに悩む患者や家族らは一様に歓迎。そんな中、医療用大麻の世界的な権威者を米国から招いた講演会がこのほど東京都内で開かれ、使用解禁に向けた機運が高まっている。一方で大麻に対する世の偏見は根強く、患者が心的負担を感じずに薬を服用できるかどうかが課題になっているようだ。

 抗てんかん薬の代表例は、大麻草に含まれるカンナビジオール(CBD)を主成分とする「エピディオレックス」。幼少期に発症するトラベ症候群など難治性てんかんに効くとされ、欧米などでは飲み薬として既に広く普及している。だが、日本では大麻取締法によって大麻の栽培や所持だけでなく、大麻を原料とする医薬品の使用が禁止され、服用が認められていなかった。同薬は、既存薬では効果の出にくいてんかん患者にとって希望の光であり、患者団体などが医療用大麻の国内解禁を国に要望。厚生労働省による臨床試験を重ね、2023年12月、医薬用の大麻を規制の対象から外す改正法が成立した。改正法の施行を受け、製薬会社による新薬承認申請の動きが本格化する。

 前述の講演会はタイを拠点に大麻由来医薬品を開発するRxLeaf社の主催で、エピディオレックスを開発した医学博士のイーサン・ルッソ氏と、医療用大麻治療の第一人者のマラ・ビリーバイキッジ医師を米国から招き、医療用大麻の基礎知識と解禁に向けての課題について講演。両氏は「医療用大麻はてんかん患者にとって必要不可欠。薬事的な研究はまだまだこれからであり、今後は研究を重ね、多くの病気を治癒できるようにしたい」と医療用大麻の可能性に期待を込めた。

医療用大麻解禁はてんかん患者への「福音」…一方で「偏見」を懸念する声
(画像=講演をするイーサン・ルッソ博士、『Business Journal』より 引用)

 ただ、国内では大麻に嫌悪感を抱く風潮がただでさえ強い中、大学アメリカンフットボール部の部員が大麻を所持した事件や、大麻グミによる健康被害事案が全国で相次いだことが拍車をかけ、大麻を巡る厳しい視線はかつてないほど高まっている。

 てんかんの子どもを持つ父親の一人は「医療用大麻の解禁は朗報には違いない」と断った上で、「てんかん患者は自分がてんかんであることを世に知られないよう恐る恐る暮らしている。そうした心理状態の中、医療用大麻の服用が周囲に分かってしまうと、偏見の二重苦にさらされ、ますます生きづらくなるのが怖い」と率直な心境を明かす。

 RxLeaf社の親会社に当たるアルケミスト・メディカル・インターナショナル社の堀越健志社長は「大麻に関する認識は『日本の常識は世界の非常識』と言っていい。健康な人が普段の生活でビタミンやミネラルを摂取するのと同じように、てんかん患者にとってCBDは生活に欠かせないものであることをアピールし続け、偏見を少しでも軽減したい」と話している。

(文=Business Journal編集部)

提供元・Business Journal

【関連記事】
初心者が投資を始めるなら、何がおすすめ?
地元住民も疑問…西八王子、本当に住みやすい街1位の謎 家賃も葛飾区と同程度
有名百貨店・デパートどこの株主優待がおすすめ?
現役東大生に聞いた「受験直前の過ごし方」…勉強法、体調管理、メンタル管理
積立NISAで月1万円を投資した場合の利益はいくらになる?