ICCのネタニヤフ首相らの逮捕状発布のニュースが流れると、オーストリアのシャレンベルク外相は「理解できない。納得できない」と指摘し、ハマスのテロ行動に対するイスラエル側の軍事行動、それを指揮したネタニヤフ首相らを戦争犯罪人としたICCの裁定を厳しく批判している。

同外相はオーストリア国営放送(ORF)の質問に対し、「民主的に選ばれた政府のメンバーとテロ組織の指導者を同一視するのはばかげている。ガザ紛争は非対称的な対立であり、一方は中東で唯一の民主主義国家イスラエル、もう一方はイスラエル国家の破壊を目標に掲げるテロ組織だ」と強調。同時に、ICCの裁定に対して「国際刑事裁判所の独立性を尊重するが、この決定は国際法に害を与え、裁判所の信頼性を損なう」と述べている。

パレスチナ保健当局によると、イスラエルのガザ戦闘で4万3000人以上のパレスチナ住民が犠牲となったという。この数字は未確認だ。看過できない事実は「ハマス」がガザ住民を「人間の盾」として利用してきたことだ。

いずれにしても、ネタニヤフ首相にとって行動が制限される可能性が出てくる。ICC加盟国には訪問できなくなるが、加盟国としてもICCの逮捕状が出ている国家元首や重要人物を逮捕するか否かはあくまでもその国の決定次第だ。例えば、ICCから逮捕状が出ているロシアのプーチン大統領は今年9月、ICC加盟国のモンゴルを訪問したが、モンゴルはプーチン氏を逮捕しなかった。ちなみに、ICC加盟国は124カ国だが、米国、中国、ロシアの大国はICCに加盟していないから、ネタニヤフ首相はそれらの国々には逮捕を恐れることなく、訪問できるわけだ(「モンゴルは「ノーベル平和賞」を逃した」2024年9月7日参考)。

ちなみに、オーストリアはICC締結国だ。ネタニヤフ首相がウィーンを訪問した場合、同首相を逮捕する義務が出てくる。その辺について、オーストリア外務省報道官はORF側の質問に対し、「ICCから逮捕状が出ている人物がわが国に入国するというリスクを冒すことは考えられない」と指摘し、「それは純粋な仮定の話だ」と述べている。