17日に投開票された兵庫県知事選挙で前知事の斎藤元彦氏が当選した。斎藤氏がパワハラ問題などで県議会で知事の不信任決議案が可決されて失職したことに伴う選挙だっただけに、選挙戦当初は斎藤氏は劣勢とみられていた。最終的に大逆転の当選を果たした要因として、巧みなSNS戦略が功を奏したと解説されているが、そのSNS戦略を担った兵庫県のPR・広報会社が選挙活動の具体的な内容をサイト「note」上で公開。同社は斎藤氏のSNSアカウントの管理・監修・運用やハッシュタグの統一などを行っていたと書かれており、もし仮に斎藤氏陣営・関係者から同社に報酬の支払いが発生していた場合、買収罪が適用されて公職選挙法に抵触する可能性が指摘されている。報酬の支払いがなかった場合は無償での選挙協力・応援となるため違法性はない。ちなみに当サイトは報酬支払いの有無を兵庫県に問い合わせ中であり、回答があり次第、追記する。
当初は斎藤知事の落選は濃厚との論調も強かったが、蓋を開けてみれば斎藤知事は3年前の当選時から約25万票も多い約111万票を獲得して当選。次点で県内の22の市長から支持を受けた稲村和美・尼崎市前市長に14万票の差をつけての圧勝となった。選挙の投票率は前回(2021年)を14.55ポイント上回る55.65%となり、県民の関心が高かったことがうかがえる。
「メディア各社の調査によれば、若い年代層ほど斎藤知事の支持者が多く、かつ選挙の投票率が前回より15ポイント近く上昇したことから考えると、普段は投票に行かない20~40代の人のなかで投票場に足を運んで斎藤知事に投票した人が多かったのではないか。選挙戦当初はメディアやSNSでも斎藤知事が孤独な戦いを強いられている様子が伝えられ、一方で稲村氏は22の市長から支持を受けたことで、斎藤氏が古い既得権益に1人で立ち向かう挑戦者というイメージが広まった。斎藤知事は県庁・県議会と対立していたが、それだけ県民の県庁・県議会に対する不信が強いということの表れであり、斎藤知事に古い行政を変えてほしいという期待が込められたのではないか。加えて、『斎藤氏が逆転勝利するところを見てみたい』という人々の心理も少なからず影響したのではないか。テレビなどの世論調査で終始、稲村氏が有利だと伝えられていたことも、本音では斎藤知事を勝たせたいと思っている人の反抗心に火をつけ投票に向かわせたのでは」(全国紙記者)
別の全国紙記者はいう。
「テレビが連日にわたり斎藤知事に批判的な報道を続けすぎた結果、選挙期間中はSNS上ではその論調が一気に逆に振れて『県庁・県議会・テレビという既得権益が斎藤知事をバッシングしていた』『斎藤知事はハメられた』という論調が強まったという印象を受ける。テレビ報道も世論も一方向に傾きすぎるという傾向が、結果的に斎藤知事の再選につながったと感じる」
公職選挙法との関係
斎藤知事の当選の要因として巧みなSNS戦略が高い効果を生んだ点が指摘されているが、そのSNS戦略を担った兵庫県のPR・広報会社の代表が今月20日、「note」上に選挙期間中の一連の活動内容を記述。それによれば、同社は今回の斎藤知事の選挙活動の広報全般を任され、監修者として運用戦略立案、アカウントの立ち上げ、プロフィール作成、コンテンツ企画、文章フォーマット設計、情報選定などを責任を持って行い、具体的には以下を担当したという。
・コピー考案、メインビジュアル作成、デザインガイドブック作成(選挙カー・看板・ポスター・チラシ・選挙公報・公約スライドの制作に利用)
・SNSのハッシュタグを「#さいとう元知事がんばれ」に統一
・X(旧Twitter)本人アカウント、X公式応援アカウント、Instagram本人アカウント、YouTube公式チャンネルの管理・監修・運用
この「note」投稿を受け、もしこの会社が斎藤氏陣営・関係者から報酬の支払いを受けていた場合は公職選挙法に抵触する可能性があるとの指摘が出ている。公職選挙法では、インターネットを利用した選挙運動を行った者に、その選挙運動の対価として報酬を支払った場合には買収罪の適用があると定められている。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。
「この会社に報酬を支払っているのであれば、公職選挙法がいう買収罪(3年以下の懲役刑や禁固刑)に該当することになります。特定の候補者の当選のために投票を得る有利な行動、すなわち選挙運動に携わる者に対して金銭などを提供した場合に公職選挙法第221条1項は買収罪を定めています。この場合、当然、報酬を支払った者には刑罰が科せられますし、たとえ、秘書、親族といった関係者が買収をし、斎藤知事自身は関わっていなくても『連座制』という制度によりその当選が無効となります。情報では、こういった会社は『勝手に』やっていたということですが、ここら辺の真相はしっかり追及していってもらいたいものです」
斎藤氏陣営・関係者からこのPR・広報会社への報酬支払いの有無について現在、兵庫県に問い合わせ中であり、回答あり次第、追記する。