一方、中国共産党政権もプーチン政権に負けないほど海外亡命者狩りに専心している。中国共産党政権が海外に自国の警察署を設置、自国の反体制派活動家を監視しているというニュースが流れている。中国が海外に住む自国民を監視していること自体は新しいことではないが、その監視体制が強化されてきているのだ。
スペインに拠点を置く「セーフガード・デファンダース」は「中国の国境外で警察活動は野放しになっている」として、「中国は世界21カ国、54カ所に『海外警察サービスセンター』を設立している。それらのほとんどはヨーロッパにあって、スペイン9カ所、イタリア4カ所、英国では、ロンドン2カ所、グラスゴー1カ所が発見されている」という。中国側は「海外に住む中国人へのサービスセンターだ」と説明しているが、「セーフガード・デファンダース」は、「中国共産党政権を批判する海外居住国民を監視し、必要ならば強制的に帰国させる機関だ」という。海外拠点の中国警察関係者から嫌がらせの電話や脅迫を受けた海外居住中国人が少なくないという。
当方は2005年11月3日、シドニー中国総領事館の元領事で同年夏、オーストラリアに政治亡命した中国外交官の陳用林氏(当時37歳)とウィーンで会見した。同氏は江沢民国家主席(当時)が1999年に創設した「610公室」のメンバーだった。「610公室」は超法規的権限を有し、法輪功の根絶を最終目標としている。中国反体制派活動家たちは「610公室」を中国版ゲシュタポ(秘密国家警察)と呼んでいる。陳用林氏はオーストラリアにいる中国人社会を監視し、法輪功メンバーがいたらマークするのが任務だった。彼は自身の任務に疲れ、その職務に疑問を感じて亡命した。
中国共産党政権は2014年、「社会信用システム構築の計画概要(2014~2020年)」を発表した。それによれば、国民の個人情報をデータベース化し、国民の信用ランクを作成、中国共産党政権を批判した言動の有無、反体制デモの参加有無、違法行為の有無などをスコア化し、一定のスコアが溜まると「危険分子」「反体制分子」としてブラックリストに記載し、リストに掲載された国民は「社会信用スコア」の低い2等国民とみなされ、社会的優遇や保護を失うことになる。中国では顔認証システムが搭載された監視カメラが既に機能しているから、「社会信用スコア」の低い危険人物がどこにいてもその所在は直ぐに判明する。その監視システムの対象が海外に住む中国人にまで広げられてきているのだ(「中国、海外にも自国警察署を設置か」2022年10月28日参考)。
参考までに、北朝鮮もロシアと中国両国と同様、海外に住む脱北者への監視を強めている。マレーシアのクアラルンプール国際空港での金正男氏殺害事件(2017年02月13日)を思い出す読者もいるだろう。いずれにしても、独裁国家と呼ばれるロシア、中国、北朝鮮は国外に亡命した国民からその監視の目を外さない、蛇のような執拗さがあるのだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年2月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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