もっともガザ危機を、イスラエルと「アブラハム合意」派のアラブ諸国の力だけで乗り切ろうとしているバイデン政権のアメリカ外交も、時代遅れの情勢認識に依拠しており、限界を抱えているように見える。

そこで日本としても、イランの存在感の大きさに気づいていながら、それに気づいていないふりをしているところがあるだろう。アメリカに気を遣うあまりである。

しかしイスラエルがイランを木っ端みじんに破壊して、その影響力を極小化する、といった見込みは、非常に現実離れしたものであるように感じる。だとすれば、イランを取り込んだガザ危機の打開、中東和平を構想しなければ、世界的な大国間の緊張関係にまで悪影響が及ぶ。

日本がどんなにアメリカに気を遣わなければならない事情を持っているとしても、アメリカへの気遣いと現実の冷静な分析とは、切り離しておかなければならない。

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