【家電コンサルのお得な話・220】10月に行われた総選挙では自民・公明が過半数を割り、議席を伸ばした国民民主がキャスティングボートを握った状態になっている。玉木雄一郎代表は「基礎控除を見直し、年収103万円の壁を178万円引き上げる」という公約を打ち出して、国民の注目を集めている。実際、テレビの報道番組やYouTube動画などで「モデルを設定し、シミュレーションを行っている」のを目にする機会が増えている。確認したいのが最低賃金平均の時給1055円で計算した場合、年収178万円を稼ぐには、1日7時間(20日で計算)働かなければならないという事実だ。
1日7時間働くなら正社員の方がよくない?
年収103万円などの各壁は家族構成や就業状況など、家族ごとに条件が違うため、一律で示すことが難しい。ただ、報道などを見れば、課題も多々あるが、好意的な意見も多く、筆者も目先の政策としては賛成である。
ここで確認が必要なのが、勤務時間の増加分である。壁が引き上げられたからと言って自動的に収入が上がるわけではなく、その分、自分の時間を提供しなくてはならない。この政策が実現すれば、収入のシミュレーションだけでなく、自分のライフスタイルを十分に考えた上で勤務時間を決める必要がある。
例えば、日本の最低賃金平均の時給1055円で計算した場合、年収103万円を得るための年間労働時間は976時間だが、年収178万円を稼ぐには1687時間となる。年間で715時間長く働く必要がある。
1日の勤務時間(20日で計算)に換算すると、年収103万円で4時間、年収178万円で7時間となる。1日当たり3時間長く働く必要がある。
1日7時間働くなら正社員としての勤務を考えた方がいいケースもあるだろう。このように、壁と収入、時間をセットで検討して、自分と家族に負担が掛からないようにすることが大切である。
特に小さなお子さんがいる家庭では、急な発熱などで思うように働けないことも頻繁にあり、こういったことは既に経験されているだろう。結果として、他の「壁」の狭間の一番不利益な勤務時間に着地する可能性があることも考えておく必要がある。
もちろん、時給が上がれば年収103万円を超えるという議論もあるが、政府が目標に掲げる最低賃金の時給1500円は「2020年代」というように、今すぐに実現できるものではない。
根本原因の解決に全省庁が一丸になってほしい
冒頭、筆者は「目先の政策として賛成」と言ったが、そもそも根本原因の一つは「失われた30年」にある。これがなければ年収は他国のように少なくとも倍増していただろう。今の倍の年収があれば、夫婦どちらかの収入で生活でき、さらに収入を増やしたい方は共働きという、自由で余裕を持った働き方ができたはずである。
現在、企業の利益は社員に還元されず株主に流れ、その多くが外国である。今の日本人は自由な時間を奪われ、家畜のように働かされ、利益は外国に回収されている。
この問題は財務省、厚労省だけでなく、経産省の政策など、全省庁を挙げて取り組むべき問題である。株主資本主義、新自由主義の弊害も明らかになっており、政治家の方々には、国民を最優先に考え、古い制度の抜本的な改革と長期的な成長戦略を示していただきたいと思う。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)
■Profile
堀田泰希
1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。
提供元・BCN+R
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