1. 1人あたり対内直接投資の推移

    続いて、人口1人あたりの対内直接投資についても眺めてみましょう。

    図3 対内直接投資残高 1人あたりOECD統計データより

    図3が人口1人あたり対内直接投資残高の推移です。

    やはりカナダが高い水準ですが、イギリス、アメリカも増加傾向が続き近年ではこの3か国が同じくらいの水準となっています。

    一方で、ドイツ、フランス、イタリアは横ばい傾向で、カナダ等との差が開いていますね。

    日本は他の主要先進国と比較すると極端に少ない水準で推移していて、近年では中国を下回ります。

  2. 1人あたり対内直接投資残高の国際比較

    つづいて、1人あたり対内直接投資残高の国際比較です。

    図4 対内直接投資残高 1人あたり 2022年OECD統計データより

    図4が2022年の人口1人あたり対内直接投資残高の比較です。

    やはり上位国はルクセンブルク、アイルランド、オランダ、スイスが占めます。

    これら4国は人口も少ない国でもあり別格とすると、イギリス(40,109ドル)、カナダ(38,428ドル)、アメリカ(32,946ドル)が高い水準に達していますね。

    フランス(13,098ドル)、ドイツ(13,036ドル)、イタリア(7,776ドル)は先進国の中ではどちらかと言えば対内直接投資が少ない方になるようです。

    日本は1,804ドルで、中国やトルコを下回り最下位です。

    海外からの投資という観点では、日本は完全に他国と異なる状況ということが良くわかりますね。

  3. 1人あたり直接投資差額の推移

    続いて、対外直接投資残高から対内直接投資残高を差し引いた差額についても、人口1人あたりの水準で確認してみましょう。

    図5 対外直接投資残高-対内直接投資残高 1人あたりOECD統計データより

    図5が対外直接投資残高と対内直接投資残高の差額を人口で割った1人あたりの数値です。

    カナダが近年急激に増加していて、最も水準が高い状況ですが、日本、ドイツも右肩上がりで増加が続いています。

    一方で、イギリスやアメリカはプラスからマイナスに変化していますね。

    中国もマイナスですが、1人あたりで見るとかなり小さな数値です。

    フランスやイタリアは停滞傾向が続いています。

  4. 1人あたり直接投資差額の国際比較

    続いて、1人あたりの直接投資差額の国際比較です。

    図6 対外直接投資残高-対内直接投資残高 1人あたり 2022年OECD統計データより

    図6が対外直接投資残高と対内直接投資残高の人口1人あたりの水準について、2022年の国際比較となります。

    オランダやスイスがプラスで水準が高いのが良くわかります。

    プラス側(対外直接投資が超過)はカナダ、日本、ドイツ、フランス、韓国と西欧、北欧諸国が並びます。

    マイナス側(対内直接投資が超過)は、アメリカ、イギリスに加え、東欧、南欧諸国やイスラエルなどが並びます。

    人口1人あたりで見ると、より各国の立ち位置が明確となりますね。

  5. 1人あたりで見た直接投資の特徴

    今回は、人口1人あたりで見た対外直接投資残高と対内直接投資残高についてご紹介しました。

    人口で基準化する事で、各国の海外との関わり方がより明確に表現されたように思います。

    主要先進国で見ると、特にカナダは対外・対内共に海外との関係性を大きく深めているような印象ですね。

    対内直接投資で見るとアメリカ、イギリス、カナダが同じくらいの水準というのもとても印象的です。この3か国は、他の経済指標でも似たような傾向になる事が多いですね。

    一方ドイツ、フランス、イタリアは特に対内直接投資については横ばい傾向が続いています。差引ではプラスとなっています。

    日本は対外直接投資はそれなりの水準ですが、対内直接投資は中国を下回って最下位です。

    イギリス、カナダの20分の1以下、ドイツやフランスの7分の1程度という極端に少ない水準です。

    対外直接投資残高は海外への資産ですから、資産面で見れば対外直接投資を多く持つ方が良いようにも思えます。

    一方で、他国は相応に対内直接投資を増やしていて、双方向的なグローバル化が進んでいるようにも見受けられます。

    互いの得意な産業が相手国に入り込み、双方向でより合理化が進んでいるとも言えるかもしれません。

    一方で、日本には海外からの投資がほとんどありません。

    海外に進出してばかりですので、産業の空洞化にもつながっているとの指摘もあるようです。

    直接投資に関する日本のアンバランスはとても特徴的だと思います。

    とはいえ、投資をした以上、そのリターンも増えていくはずですね。

    このような直接投資の果実がどのように日本に還流するのか、次回は海外からの所得面について注目してみたいと思います。

    皆さんはどのように考えますか?

    編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2024年7月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。