1963年にはキング牧師らによるワシントン大行進(March on Washington for Jobs and Freedom)があり、1964年に公民権法が制定される。1970年代に入ってからは連邦議会にも黒人議員が増えてくるなど政治力をもちはじめていたのだ。彼らは声をあげて主張しはじめるようになったのだ。
EPAによると、Environmental Justice movementのキッカケはNC州ウォーレン地区の貧しいコミュニティに有害物質を埋め立てる州政府の決定への抗議から1982年にはじまった注4)。
翌年の1983年にはテキサス州ヒューストンの黒人居住区が有毒廃棄物処理場に選ばれているとロバート・D・バラード博士(AL州黒人大学出身)らが研究結果を発表したことで大きな話題をよんだ。5つの市営ゴミ処理場、80%の市営ゴミ焼却場、75%の私営ゴミ処理場は黒人居住区に設置されていたのである。ヒューストン人口の黒人比率が25%だったのに対して偏っていることを発表した。
環境汚染は有色人種・マイノリティの住む地に集中していて、そこには差別(Environmental racism)が存在しているというのが彼らの主張だ。そのEnvironmental racismを是正する運動というのがEnvironmental Justice になるのだ。
こうした事実が明るみに出るにつれて、環境正義団体(Environmental Justice )たちのリーダーが、今までの白人中心の自然保護団体と手をくみはじめていくことになる注5)。
1991年10月、ワシントンで「the First National People of Color Environmental Leadership Summit」が3日間開催されたとき、環境正義運動は大きな盛り上がりをみせるようになっていた。サミットには、米国、カナダ、中央アメリカから数百人の環境正義のリーダー達が集まった。サミット名にも記載されているように「People of Color Environmental(有色人種の環境問題)」なのだ。
環境正義団体(Environmental Justice )は、石炭火力発電所を目の敵にしている。その理由は、環境差別の観点なのだ。シシエラ・クラブの表現をかりるならば、石炭火力発電所は、汚染物質を流して有色人種・ネイティブアメリカン部族、低所得者のコミュニティに健康被害を与えているからということだ注6)。
また、環境擁護団体の主張としては、化石燃料企業は白人の独占産業とみられていることも理解しておいたほうがいい。1940年、黒人は石油生産に従事する全従業員の0.05%しかいなかった。なのに、重労働で安月給な仕事は黒人に任せる傾向があったのだ。その一方で、製油所等の工業用地は、意図的にネイティブアメリカン居住区や有色人種コミュニティの近くに建設したということもシエラ・クラブには書かれている注7)。
このようにして、Environmental Justiceは、今までの「自然保護/野生保護」という視点での環境擁護団体を飲み込んでいったのだ。今もまだ「自然保護/野生保護」の活動はもちろんあるが、環境正義の方が大きくなってしまっているのが実態だろう。
公民権運動の流れをくんででてきた「Environmental Justice movement」なので、当然、環境団体の支持政党は大半が民主党になってしまったというわけだ。
今の環境擁護団体は決して、最初から同じ活動をしていたわけではない。Environmental Justice movementの流れで、環境擁護団体は大きく変化していき、今でこそ大きな力をもつようになった。自然保護・野生保護と、環境正義の両方の利害が一致しているからこそ、現在は団結しているだけで、何かのキッカケがあればデカップリングする可能性はある。
■
注1)「NRDC Action Fund Endorses Biden for President」 「LCV ACTION FUND ENDORSES JOE BIDEN FOR PRESIDENT」
注2)Amrican Dum
注3)The Man Who Saved the Grand Canyon
注4)Environmental Justice Timeline
注5)The Environmental Justice Movement
注6)How Coal and Gas Damages Your Health
注7)The Fossil Fuel Industry’s Legacy of White Supremacy
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?