かつて、出産中に起こった不測の事態で産婦人科医が不当に逮捕された事件が起こった。これを契機に、産科医療が崩壊した。地方から産科医が去り、産科を目指す医師が減った。逮捕そのものが異常であったのは言うまでもないが、それがどのような影響かを全く考えなかった司法の大失策だった。

今回、働き方改革を推進するならば、医療供給体制をシミュレーションし、それに十分な対策を練るべきであったはずだが、それができているとは思えない。正月に餅を詰まらせて亡くなる高齢者が100人以上いるという。高齢者が増えている今、当然ながら救急医療の需要は増える。医療機関が労働基準法に抵触しないことを優先すれば、救急医療の需要と供給の比は大きく崩れる。

司令塔のいない日本の医療は危機的だ。

編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2024年1月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

【関連記事】
「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
大人の発達障害検査をしに行った時の話
反原発国はオーストリアに続け?
SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
強迫的に縁起をかついではいませんか?