ISはイランの大半を占めるシーア派住民をイスラム教からの背教者とみなし、彼らを軽蔑している。ISの分派は隣国のアフガニスタンで活動しており、パキスタン近くのホラサンに拠点を置いている。通称「イスラム国ホラサン州」(ISKP)と呼ばれている。
一方、イランはスンニ派の盟主サウジアラビアと接近している時であり、イスラエルのガザ戦争ではハマスを支援するイランはアラブ・イスラム教国を結束させて反イスラエル包囲網を構築している矢先だ。それだけに、ISのテロはタイミングが悪い。ISは同じスンニ派のハマス指導部に対し、「シーア派組織(イラン系)とは余り関係を深めないように」と警告を発しているのだ。
参考までに、ISKPの台頭はイランや中東地域だけではなく、欧州でも警戒を要する。彼らはユダヤ人とキリスト教徒に対する世界的な攻撃を呼びかけているからだ(「『イスラム国』分派が欧州でテロ工作か」2023年12月27日参考)。
英国のキングス・カレッジ・ロンドン(KCL)で教鞭を取るテロ問題専門家のペーター・ノイマン教授は「ISKPは現在最も活発なテログループであり、その起源はアフガニスタンで、最も過激で暴力的なジハーディスト(イスラム聖戦主義者)武装集団だ。おそらく現在、西側諸国で大規模なテロ攻撃を実行できる唯一のIS分派だ」と説明している。
なお、イラン当局がケルマン市の爆発テロ直後に取った最初の対応は対アフガン、対パキスタン国境線の警備強化だったという。イランがISKPの侵入を恐れていることが良く分かる。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年1月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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