有給休暇は社員の権利

 辻氏が投稿した文においては、「有給休暇」と「欠勤」が混同している感もあるが、本来の使用者と労働者、それぞれの権利と義務について、山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士は次のように説明する。

「有給(正しくは年次有給休暇)を使用させることは、労働基準法39条が定める会社の義務であり、社員の権利ですので、会社の配慮ではないことは自明です。なお、欠勤は、労働力を提供するという社員の債務不履行(義務違反)ではありますが、債務不履行が成立するためには『帰責性』が必要です。風邪ひいたというのは、よっぽど不摂生な生活をして風邪を引いた場合でない限り、『帰責性』はないでしょう。

 また、『当日の有給申請』ですが、これはいろいろ問題になるので『有給の申請方法』を明確に定めておくべきです。就業規則などで『有給申請は3日前まで』と定めておけば、これにしたがわない当日の有給申請は認められません」

 有給休暇を使うことは、労働者に認められた「権利」であるので、「権利じゃない。会社の配慮」は、明らかに誤り。また、当日の有給休暇申請が認められるか否かは、会社の裁量によるところがあるが、風邪などの体調不良での欠勤については債務不履行が成立しないことから、「雇用契約上義務違反」との見解も正しくないといわざるを得ない。

 辻氏は、「私が伝えたかったのは欠勤によって社内やビジネスにとって迷惑かかるから 安易に考えないよう意識を醸成しましょうってことです」と、一連の投稿の真意を述べており、経営者の立場から賛同する声が一定数あるのも確かだが、休みを気軽に取得できない会社という印象を与えてしまった感は否めない。突然、仕事を休むと周りに影響が出ることがあるというのも理解はできるものの、特に近年は体調不良で無理に出社して、周りに病気を広めるリスクを懸念する意識も強まっており、少しでも異変を感じたら休んで回復に努めるべきとの考え方も多い。

(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)

提供元・Business Journal

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