工場、設備、多くの従業員を抱える必要がある

 年によって変動があるため一概にはいえないが、ざっくりといえば日本を代表する自動車メーカーであるトヨタの平均年収は総合商社の約半分の水準となっているわけだが、なぜメーカーと非メーカーの間で格差が生じるのか。人材研究所ディレクターの安藤健氏はいう。

「その理由は明確でして、メーカーはモノを製造するための工場、設備、そして工場従業員を含めて多くの従業員を抱える必要があるため、売上のうちで給与の支払いに回せるお金の余裕が少なく、逆に金融や商社、ディベロッパー、コンサルなどの非製造業は、製造業と比較すると少ない社員数と設備投資で事業を運営できるため、売上のうちより多くを給与の支払いに回せるという違いがあるためです。その観点でいうと、製造業と同じく多くの設備と人員を必要とする鉄道業や小売業なども平均年収が低くなりがちです。

 付加価値のうち人件費がどれだけの割合を占めるのか示す労働分配率でみると、製造業は平均約50%なのに対し、たとえば金融業であるクレジットカード業は30%台となっています。ちなみに製造業の労働分配率は全産業平均とほぼ同じですが、産業別就業者数の分布(2023年の平均)としては、製造業の就業者数がもっとも多く全体の15.6%なのに対し、金融業と不動産業はともに2%台となっており、製造業では限られた売上=パイを多くの労働者に分配する必要があるため、一人当たりの賃金が抑えられる傾向が生じます。ちなみに就業者数が2番目に多く、全体の15.4%を占める卸売業・小売業も平均年収が低い業界となっています。

 このほか、一般的に初任給は大学院卒がもっとも高く、その次が大卒、高卒と続きますが、工場がある製造業には高卒の従業員が多いのに対し、大手の金融機関や総合商社、コンサル会社などでは少ないという要因も影響しているでしょう」

(文=Business Journal編集部、協力=安藤健/人材研究所ディレクター)

提供元・Business Journal

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