強奪は、搬出用のトラックが鉄道の操車場に移動するまでの間に実行された。ソ連兵が車両に付き添っていないことを確認すると、トラックを止めて木箱を覆った上で、新たな運転手が引き継いだ。元の運転手については「ホテルにエスコートされ、一晩泊まらされた」と説明している。

あらかじめ借りておいた廃品置き場にトラックを乗り入れ、夜を徹した作業が行われた。

最初の難関は、屋根を剥がして侵入に十分なスペースを確保することだったが、度重なる展示で何度も開閉されてる屋根はすでに傷んでおり、強行侵入の痕跡を残さないようにするのは容易だった。

チームは、球体の機首にある点検窓を外して侵入する班と尾部から130個のボルトで固定されている蓋を取り外してエンジン室に侵入する班に分かれた。筆者は、機種とエンジン部の間の部分を確認するために切り離し作業が必要になるなどの困難に言及している。それでも必要なマークを撮影したり手で書き取るなどして、なんとか作業を終えた。

痕跡を残さないよう慎重に元通りにし、屋根板を再度釘で固定した。機材を回収して迎えの車が来たのは明け方の4時だった。

廃品置き場から事前に決められた場所までトラックを移動して、元の運転手に交代させた。操車場のソ連兵は、1日遅れで到着したルーニクに驚く様子もなかったといい、著者のフィナーは「今日まで、ソ連兵はLunikが一晩借りられたことに気付いたという兆候はない」としている。

まさに映画のような実話。サーチライト・ピクチャーズの社長、マシュー・グリーンフィールドは、「ジャレッドにルピタ、ジョンの並外れた才能と洞察に優れたケンプの監督のもと、『Lunik Heist』は策略と意外なヒーローに溢れたワイルドでジェットコースターのような作品になる」と映画化に期待を語っている。