弊害3:年間積立額が大きい
5年で1,800万円の非課税枠を使い切るには、月平均30万円の積立が必要だ。日本人の平均所得が400万円台であることを鑑みると、余剰資金が豊富にある人でない限り、月30万円の積立を5年間継続するのは難しいと考えられる。
よって、余剰資金が豊富にない人は、最短での全額投入が向いていないと考えられる。
5年で全額投入する利点
もちろん利点もある。確認しておこう。
利点1:リターンの可能性を最大化できる
リスクにさらす資産を増やせば増やすほど、期待できるリターンも大きくなる。最短で全額投入をするということは、それだけ早期にリスクにさらす資産を大きくすることになる。
投資によって生じるインカムゲインを再投資する場合、すなわち複利で資産を増やしていくことを想定した場合、その効果は大きく資産形成は加速する。
利点2:老後資金問題の後顧の憂いを早期に断つことが可能
老後資金として2,000万円相当の資産形成が必要と言われているが、最短5年で全額投入をして相場が上がれば、老後資金2,000万円と同規模の資産を早期に確保できる。
老後資金問題の後顧の憂いを早々に断つことができ、精神的に解放されることも可能だと考えられる。
「より多く」よりも「より長く」!
しかしながら、投資対象の選定に自信を持っていて、リスク許容度を見極め暴落が来ても動じず、余剰資金の範囲の無理のない投資ができる人はそう多くない。
その意味でも、投資では、「多くの資金を投じる」よりも「より長く続ける」ことのほうが大切なポイントだ。複利効果を最大化させたい、非課税枠を最大化させたいと思うあまり、無理に資金を捻出するのは得策ではないと筆者は思う。
※本記事は専門家の視点で執筆したものであり投資を目的としたものではありません。投資の最終決定はご自身の責任と判断で行ってください。
文・井上喜奈子(ファイナンシャル・プランナー)
中央大学法学部卒業後、大手生命保険会社に入社。約7年、生命保険と損害保険のコンサルティング営業を行う。個人営業と法人営業を経験。出産後ライターとして活動している。