若い頃のデザインには難あり?
だが、建築の専門家は、そもそもデザインの段階から問題があると指摘する。
「那珂川町馬頭広重美術館では、スギの木を屋根や壁に使用していますが、普通ではありえないデザインです。ヒノキなどの油分を多く含む材質であれば水に強いのですが、スギは室内や屋根の下など直接風雨にさらされない場所で使う材木です」(一級建築士で建築エコノミスト・森山高至氏)
隈氏は、ほかにも国立競技場など公共建築物を設計されているが、それらも同様に、比較的短期での大規模改修が必要になる可能性はあるのだろうか。
「隈氏に限らず、ほかの建築家でもあることなのですが、無名な頃には予算の少ない依頼を引き受け、そのなかで自分の名前を広められそうな目立つデザインをしたりします。那珂川町馬頭広重美術館も、そのひとつといえます。使っている材料にもよりますが、大規模改修が必要になるものも一部あると思います。一方、最近の作品では、そのような心配はないと思います。国立競技場や高輪ゲートウェイ駅、高尾山口駅などは問題ないでしょう」(同)
隈氏のデザインとしては、東京・世田谷の「M2ビル」、高知の「雲の上のホテル」など民間の建築物のほか、宮城・石巻の博物館「北上川・運河交流館 水の洞窟」、宮城県登米町の「伝統芸能伝承館森舞台」、栃木・那須「石の美術館」、作新学院大学の校舎群といった公共性の高い建物も多い。さらに、兵庫・伊丹市役所庁舎、千葉市役所庁舎、滋賀・守山市役所庁舎、兵庫県庁舎など、自治体庁舎も多く手掛けている。
伝統芸能伝承館森舞台で日本建築学会賞を受賞したほか、作新学院大学校舎群では栃木県マロニエ建築賞(街並み景観部門)、としまエコミューゼタウンビルでグッドデザイン賞とBCS賞、京王電鉄高尾山口駅駅舎でグッドデザイン賞、JR高輪ゲートウェイ駅でグッドデザイン賞など、数多くの受賞歴がある。
2019年には紫綬褒章も受賞し、今や建築界においては右に出る者はいないほどの大物と目されているが、「M2ビル」は業界誌で「世界の10の醜悪なビルの一つ」と酷評されるなど、若き頃には本人ですら振り返りたくないようなデザインもある。それらが、今、ネットやメディアでクローズアップされているのだ。
(文=Business Journal編集部)
提供元・Business Journal
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