「京都離宮~おだしとだしまき~」が、日本最大の空間デザイン賞「日本空間デザイン賞2023」の入賞作品に輝いた。

同施設は、日本初の出汁のテーマパークとして、京都から全国・世界に出汁文化と出汁の魅力を広めるために創られた空間として注目を集めている。

伝統的建築物と出汁のテーマパークの融合

同施設は、今年8月29日(火)に日本最大の空間アワード「日本空間デザイン賞2023」のショップ空間カテゴリーにおいて、入賞作品に選出された。

「日本空間デザイン賞」は、空間デザインの新しい価値を導き出し、日本から優れたデザインを世界に発信することを目的とする賞だ。ショップ空間・博物館・文化空間など、11カテゴリーで作品が募集され、それぞれ時代性・創造性・社会性・文化性などが審査される。

人が暮らしていた空間には、その間の情景が蘇る魂のようなものが存在するという。日本家屋をリユースして造られた同施設は、その既存空間と対話しながら、無形文化遺産である和食ベースの“出汁”の魅力を発信できるテーマパーク&店舗としてデザインされた。建築物だけでなく、店舗空間・庭園など全てにこだわり抜いた空間ともいえる。

“おくどさん”をイメージしたカウンター

京都らしい暮らしの文化を継承するという想いから、商品カウンターには古来、家庭で愛されてきた「おくどさん」を起用。家庭においては、食事を作る台所が生活基盤の一つであることを重視し、京都離宮の空間の核となる出汁の魅力を伝える商品を幅広く並べる。

まるで削り節かのようなヒノキ・スギで作る光壁

鰹の削り節のように薄く削った吉野ヒノキ・スギを貼り合わせて作る光壁も出汁の魅力を表現するインテリアの一つだ。木の温もりを残したまま表現する光壁は大きな存在感となり、空間を締めるデザインとして機能する。

伝統の技を巧みに生かしたショップ空間

建材が高騰する現代。店内は、そんな時代ではなかなか叶えられない、意匠を携えている建築空間を最大限に活用する。例えば、欄間。それは、一つひとつ手彫りされた伝統工芸品だ。

また店内には、出汁の魅力を学べる8mと6mのショーケースを設置し、関連商品など約70点以上を取り揃える。

出汁の奥深さを味わえる飲食スペース

店内では、天然出汁からつくる4種類の出汁を飲み比べ、その場で選んだ出汁の料理を味わえる。個室空間は最大で12名。料理教室などができるようなシンクもあり、新旧の時間がマッチした空間となっている。

邸宅としての役目を終えた建築は、数10年の雨風に耐えながら「京都離宮」として新たな息吹を吹き込まれた。デザイン性と京都の風情と歴史を調和させた、斬新で趣深い空間は「日本空間デザイン賞2023」ショップ空間カテゴリー受賞にふさわしいといえるだろう。

京都離宮~おだしとだしまき~
所在地:京都府京都市伏見区中島鳥羽離宮町45

(高野晃彰)