■存在感増す「擁護派」の声

ネットでは連日、クマによる被害とその駆除がニュースとして報じられている。そんな中、コメント欄に必ずといっていいほど存在するのが「クマは臆病で人は襲わない」「殺さず保護するべき」「自然をいじくり倒した人間のせい」という、擁護の声だ。

しかし、大勢を占めるのは被害者を思いやるコメントと、駆除を進めるべきという声で、「机上の空論」「だったら現地でクマと対話してこい」と擁護派を否定する意見も多い。この状況を、秋田の住民たちはどう思っているのか。クマの出没が相次いでいる秋田・由利本荘市の70代男性に話を聞いた。

■「従兄がクマに襲われた」

秋田駅から車で約1時間30分、鳥海山の麓で代々農家を営んできた男性は、4年前に従兄がクマに襲われた。

「従兄夫婦が山菜とタケノコを採りに山に行ったら、突然背後から熊が飛び出してきて、従兄が襲われたんです。無我夢中で手足をバタつかせて追い払うも、顔を何度も食い散らかされてしまい、ドクターヘリで救急搬送。顔の形成手術を何回も繰り返していますが、それはそれは酷いものでした。これまで何度も行った山で、クマに襲われたなんてことは一度も聞いたことがなかったんです」(農家の男性)。

その頃から、山のみならず自身が管理している田畑周辺にも熊が出始めたという。

「9月、うちのお墓の掃除に行ったらクマがいたんです。偶然クマが逃げていったので良かったですが、ニュースでよく聞く『目を見ながら後ろに下がる』なんてやる余裕は全くなかった。想定していない場所にいるもんですから。その時は市にすぐ報告しましたが、農家をやっている仲間には役所関係者立ち合いの手続きが面倒だからと、連絡しない人もいる。報告されている数字以上に遭遇数は多いのだと思います」と続ける。