用済みになった人工衛星を勝手に移動させたのは誰なのか――。55年前に打ち上げられたイギリス初の軍事衛星はいつの間にか別の場所に浮かんでいたのだ。
■55年前のスクラップの軍事衛星が移動していた
1969年11月に、米フロリダ州ケープカナベラルからデルタロケットで打ち上げられたイギリス初の軍事衛星「Skynet-1A」は、イギリス軍の通信を中継するためにアフリカ東海岸の上空の静止軌道上に配置された。
しかし残念なことに運用開始から約18カ月後にハードウェアの問題で機能しなくなり放棄を余儀なくされた。
東経約40度の静止軌道上に配置されていたことから、故障したままであってもその地点に留まっているはずであり、実際に1970年代前半まではSkynet-1Aが静止軌道上にあったことが残された追跡データからわかっている。
“宇宙ゴミ”となったSkynet-1Aを誰もが忘れかけていたある日、この廃棄軍事衛星の軌道は数十年の間に劇的に変化していたことがわかり、現在はアメリカ大陸上空(高度3万6000キロ)の位置にあることが特定されたのだ。1970年代半ば以降はSkynet-1Aの移動に関する明確な記録がないため、謎は深まるばかりだ。
軌道力学から、500㎏もあるこの軍事衛星が現在の場所に自然に漂流した可能性はきわめて低い。
とすれば1970年代半ば以降に軍事衛星のスラスター(制御推進装置)を起動させて西に向かうよう命令されたことはほぼ確実である。問題は、それが誰で、どのような権限と目的を持って行ったのかである。
宇宙コンサルタントのスチュアート・イブス博士は、Skynet-1Aの現在の軌道は西経105度の“重力井戸(gravity well)”に位置しており、他の衛星との衝突のリスクが高まっていると指摘している。Skynet-1Aが稼働中の通信衛星の近くに留まり続けるため、宇宙交通管理上のリスクになっているのだ。
“重力井戸”にある衛星はあたかもボウルの底にあるビー玉のように揺れ動いており、ほかの衛星の進路に接近する可能性がある。
Skynet-1Aはイギリス初の軍事衛星だが、アメリカで製造されて打ち上げられ、一部のミッションは両国の共同運営下にあった。
この件を調べているロンドン大学ユニバーシティ・カレッジの博士課程の学生、レイチェル・ヒル氏によれば、オークハンガーの英空軍基地が重要なメンテナンスのために運営が一時的に停止した間、制御が米軍に移されていた時に軍事衛星の移動が行われたのかもしれないと英「BBC」に話している。
誰が、なぜ衛星を移動させたのかは興味深い謎だが、もしほかの運用中の人工衛星に衝突した場合は大きな問題になることは間違いない。その最悪のケースが起きた場合の責任の所在として、誰が衛星を動かしたのかを明らかにしておく必要はある。しかしはたして今後“犯人”が明らかになることがあるのだろうか。そしてもちろんこれは年を追うごとに深刻化している宇宙ゴミの問題でもある。
文=仲田しんじ
提供元・TOCANA
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