ところで、ロシア国防省が最近公表した、戦争負傷者への補償金制度に対して、負傷兵士の家庭などで不満が聞かれる。
これまでウクライナ戦争で負傷した兵士に対してはその負傷の重度とは関係なく一律300万ルーブル(約3万ドル)が支払われてきたが、新制度では重度の負傷した兵士には300万ルーブルから400万ルーブルに引き上げられる一方、負傷が軽い兵士には100万ルーブル、10万ルーブルとその額が少なくなる。この結果、国防省側が支払う補償金総額は一律300万ルーブルより減少するという。
この新制度は経済専門家出身のアンドレイ・べロウソフ国防相の「資金の効率的使用」の改革案の一つという。軽度の負傷の兵士は受け取る補償金が少なくなるということで、批判の声が出てくるわけだ。
ドイツ民間ニュース専門局ntvのモスクワのライナー・ムンツ特派員によると、「モスクワは前線から遠く離れており、日常生活ではウクライナに対する侵略戦争の痕跡はほとんどないが、スーパーで買い物する人々は棚にある商品の値段を見て、怒りの声が聞かれる。今年8月末段階で、インフレ率は食料品は9.72%、財6.09%、サービス11.73%となっている。また、68歳の医者が戦争を批判したということで5年の実刑判決を受けている。ロシアでは依然、プーチン大統領のウクライナ戦争を批判することは許されない雰囲気が漂っている」という。
なお、ウィーンの比較経済研究所(wiiw)によると、「政策金利はすでに19%に達しており、さらに引き上げられる可能性が高い。上半期の業績を受けて、通期の成長率予測を再び3.8%に引き上げたが、その後、成長率は2025年に2.5%、2026年には2.2%に低下すると予想されており、インフレ率が4%の目標に戻るのは2026年以降と予測される」という。
ロシア国民は当分、高インフレの中、厳しい生活を強いられるわけだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年11月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。