福岡県西部に位置する糸島は、魚が豊富な玄界灘・県境にそびえる脊振(せふり)山脈・田園風景などの自然に囲まれた場所です。福岡の都心部から車で1時間程度で行けて、多くのスポットには駐車場が用意されています。
今回は、糸島を車で半日(約5時間)かけて観光するモデルコースを考え、実際に巡ってみました。このモデルコースを参考に、海と緑に囲まれた糸島をめいっぱい楽しんでください。
目次
1. 芥屋の大門(けやのおおと)を遊覧船で観賞(10:00~11:00)
旅の始まりは、糸島半島の北西端に位置する 芥屋の大門。
深海から噴き出した溶岩やマグマが海底の岩を押し上げ、冷え固まった柱状の割れ模様(柱状節理)が特徴的な大岩です。国指定の天然記念物で、断崖の高さは64mにも及びます。
遊覧船に乗り込み、海上から自然の造形美を鑑賞できるスポットです。
毎年3月中旬〜11月末の期間中、海上の状況が落ち着いているときに限り遊覧船が出航しています。
遊覧船は受付でチケットを購入して乗船します。
船の定員は20名で、事前予約は受け付けていません。現地(遊覧船乗り場)で直接受付を済ませましょう。受付を終えた順番で乗船の案内をしてもらえるため、乗船したい便から時間を逆算して訪れることをおすすめします(筆者は10:15発の便に乗船するために、10時前に受付を済ませました)。
遊覧船は平日の場合9:30から45分おき、土日祝日の場合9:30から30分おきに出航します。乗船時間は25〜30分程度です。
芥屋の大門周辺の海は、風や気象状況の影響を受けやすい特徴があります。そのため、天気がよくても高波の影響で欠航になることも。条件が整い乗船できる日はラッキーなんです。
乗船員さんからは、「少し波があって揺れるけど運航できるよ。ここ2〜3日は高波で運航できんかったけど、よかったねぇ」とお声がけをしていただきました。
船で海に出る貴重な体験にドキドキが高まってきたところで、ついに出発の時間が。乗船員さんの指示に従い救命胴衣を装着して、いざ出航!
港から出たら、グングン速度をあげていく遊覧船。体いっぱいに風を受けながら思い切り息を吸い込むと、潮の香りを感じます。
目の前に遮るものが何もなく、どこまでも広がる海と空......。
筆者が訪れた日は、少し高波でした。船が波をかき分けて前進するたび、水しぶきが跳ね上がります。
芥屋の大門は、別名「大門神窟(おおとしんくつ)」です。対岸に建つ大祖(たいそ)神社の祠(ほこら)としての役割をもっています。
エンジン付きのボートがない時代、神社へ向かう人々は手漕ぎボートで荒波を越えて芥屋の大門へ参拝をしていたんだとか。海と共に生きてきた糸島の人々にとって、芥屋の大門がどれだけ大切で神聖な存在なのかが伝わるエピソードです。
打ち寄せる波の侵食によって生み出された自然の造形は、まさに圧巻。
筆者と一緒に芥屋の大門を見上げているお客さんたちからも「うわぁ...!すごい!」と歓声が上がります。
船内の座席からゆったりと遊覧を楽しむこともできます。窓枠が雄大な自然を絵画のように切り取っていて面白い。
運航中には、乗船員さんの案内に従って甲板や後部に出られます。
出航時の気象状態や波の高さなどを考慮して最適な判断をしてくれているので、乗船員さんの案内に従って安全に遊覧を楽しんでください。
海と洞窟内の波がどちらも落ち着いているときは、芥屋の大門の鑑賞に加えて、遊覧船に乗ったまま洞窟内を覗く体験ができるそう。
乗船員さん曰く、洞窟内に入れるほど波が穏やかな日は比較的少ないから、もし入れたらラッキーくらいに思って欲しいとのことでした。
筆者は洞窟内に入れませんでしたが、迫力ある自然を間近で感じられる貴重な経験ができて大満足です。自然を満喫できる遊覧船の旅をぜひ楽しんでください。
芥屋の大門(けやのおおと)遊覧船
・住所:〒819-1335 福岡県糸島市志摩芥屋677
・電話:092-328-2012
・営業時間:9:00~16:30(欠航の場合、欠航案内のアナウンスが流れます)
・チケット料金:大人(中学生以上)1,000円 3歳〜小学生 500円 ※3歳以下は大
人1名につき幼児1名無料。2名以上は小人料金発生
・乗船ダイヤ:料金 運航時刻 ※乗船時間は25分程度(9:30から平日は45分・休日
は30分おきに出航)
・駐車場:専用駐車場あり
車でのアクセス:西九州自動車道 前原インターから芥屋方面に約20分、国道202
線 前原から志摩・芥屋方面に約20分
・公式サイト:芥屋大門遊覧船
・公式SNS:芥屋大門観光社(Instagram)
2. 芥屋の大門公園(糸島のトトロの森)を歩く(11:10~11:30)
芥屋の大門公園は、芥屋の大物の遊覧船乗り場から車でたった2分で辿り着けます。
公園内にある展望台へ向かう遊歩道の名称が、糸島のトトロの森です。
木々が連なる美しい風景が特徴的で、訪れた人が撮影した写真がトトロの映画に出てくるワンシーンのようだとSNSで話題になり注目を集めています。
公園内に併設されている無料駐車場から芥屋の大門公園に向かって歩くと、目の前に壮大な玄界灘が広がります。
写真の中央にある大きな岩が、先ほどまで遊覧船で眺めていた芥屋の大門です。国指定の天然記念物の周辺が、自然豊かな公園として整備されています。
遊歩道近くにある鳥居と青い空が映える防波堤での写真撮影も人気で、筆者が写真を撮る前後それぞれで、2組のお客さんが撮影を楽しんでいました。
展望台までの道のりは180mの上り坂が続きます。さっそく、展望台へ向かいましょう。
遊歩道へと向かう道の入り口はちょっと低め。
腰を屈めて階段を登っていくと......、
入り口を通り抜けるとすぐに、アーチ状に立ち並ぶ木々が作り出す幻想的な空間が広がります。
枝葉の間から差し込む陽だまりが、キラキラと地面を照らす様子から目が離せません。
筆者が訪れた日は快晴で木漏れ日を楽しめましたが、雨の日はカラフルな傘を差して写真を撮ったり、天気によっていろいろな楽しみ方ができそうです。
遊歩道は土でところどころ大きな石が埋まっているため、足元が滑りやすいかもしれません。
スニーカーなど、滑りにくい靴底の履き物で訪れることをおすすめします。
芥屋の大門公園(糸島のトトロの森)
・住所:〒819-1335 福岡県糸島市志摩芥屋732 玄海国定公園
・駐車場:専用駐車場あり(無料)
・アクセス:芥屋の大門遊覧船乗り場から車で約2分
3. 芥屋の展望台からの眺めを楽しむ(11:30~11:50)
遊歩道(糸島のトトロの森)で写真撮影を楽しみながら展望台を目指す道は、少し前屈みになりながら登る程度の勾配があります。
途中で現れる分かれ道には、案内版が用意されているため安心です。
一歩踏み出すたびに、階段に降り積もっている枯葉のカサカサとした音が耳に届きます。
頂上に近づくにつれて、心拍数も高まってきました。
ついに展望台が。ゴールまであと少しです。
展望台の階段を登り切ると、一気に視界が開けました!
吹き抜ける海風は、上り坂を登ってきた筆者の体の熱を心地よく鎮めてくれます。
展望台にたどり着いた達成感を噛み締めながら遠くに目を向けると、どこまでも広がる空と海が飛び込んできました。
空と海はどちらも青色だけど、空は海に近づくほど白味が強まっています。普段は何となく眺めている空や海に、こんなにも繊細なグラデーションがあることに気づきました。
180mの坂道を登り、少し歩き疲れたので防波堤に座り海を眺めながらゆったり休憩をすることに。
打ち寄せる波の音と海風が心地よくて、あっという間に10分くらい経っていました。芥屋の大門方面に目を向けると黄色遊覧船が小さく見えて、さっきまであの船に乗っていたんだよなと、不思議な心地になりました。
芥屋の展望台
・住所:〒819-1335 福岡県糸島市志摩芥屋675-1
・駐車場:専用駐車場あり(無料)
・アクセス:芥屋の大門遊覧船乗り場から車で約2分
4. 志摩サンセットロードを走る(11:50~12:30)
防波堤でゆったりとした時間を過ごしエネルギーを充電したら、車に乗り込みドライブに出発です。
糸島の定番ドライブコースである県道54号線(志摩サンセットロード)では、山と海の織りなす風景や海岸線を楽しめます。
音楽をかけながらドライブを満喫するもよし。窓を開け、海風を感じながら通り過ぎる風景を目に焼きつけるもよし。
ドライブコース沿いには、おしゃれなカフェが点在しているので、立ち寄るのもおすすめです。
カフェや景観が人気な場所には、駐車場が整備されていることがほとんどです。
筆者は眺めに惹かれ、海岸沿いの駐車場に車を停めてみました。
海岸に到達する白波の動きや海面のグラデーションの繊細さに目を奪われます。
志摩サンセットロード
・住所:県道54号線(全長33.3km:泉川河口の弁天橋〜桜井二見ヶ浦)
5. NATTY DREAD(ナッティ ドレッド)でハンバーガーを食べる(12:30~13:30)
糸島の自然を楽しんでいると、だんだんとお腹が空く時間帯が近づいてきました。
ランチにおすすめなのは、志摩サンセットロード沿いにあるNATTY DREAD(ナッティドレッド)のハンバーガーです。
ドライブを楽しんでいると、NATTY DREADの看板を発見しました。
生い茂る緑の中に隠れる秘密基地のような見た目にワクワクします。
入店したらまず、料理を注文しましょう。料理が完成したら呼び出しアナウンスが流れ、カウンターで料理を受け取る仕組みです。
店内には浮き輪やロープなど、海や船をモチーフにした小物が満載です。壁にはクジラやウミガメなどの海のいきものたちが、タイル画でデザインされています。
NATTY DREADには、海を眺めながら食事を楽しめるテラス席も用意されています。
吹き込む海風や潮の香り・波の音などが心地よくて、注文した料理を待つ時間がものすごく贅沢な瞬間に感じられました。
スタッフさんのおすすめは、単品のハンバーガーにプラス400円でサイドメニューと好きなドリンクを追加できるアイリーセットです。サイドメニューは、4種類(コールスローサラダ・フライドポテト・ジャークチキン・オニオンリング)の中から好きなものを選べます。
筆者は、人気メニューのアボカドベーコンレタスのアイリーセットを注文することに。サイドメニューはオニオンリングを選択しました。
ボリューミーなハンバーガーに思い切りかぶりつくと、お肉とベーコンのジューシーさが口いっぱいに広がります。アボカドが全体の味をまろやかにしてくれるアクセントになり、食べ進めるごとに味の変化を楽しめました。オニオンリングは、カレー風味でカリッカリ。歯応えがクセになる一品です。
こちらは、NATTY DREADの名物料理ジャークチキンです。
ジャマイカの名物料理を店舗オリジナルの特製漬けダレとスパイスを使って炭火で焼き上げています。一口噛み締めるごとに、鼻に抜ける香りがたまりません。
テラス席で波音に耳を傾けていると、音が体を包み込んでくれるような安心感を覚えます。美味しいご飯を食べて、ぼーっと海を眺める時間はまさに、非日常です。
NATTY DREADは多くの人が訪れる人気店です。そのため、商品が完売して実際の営業時間より早く閉店することも。
営業時間に不安を感じる方は、志摩サンセットロードのドライブとNATTY DREADでのランチの順番を交換して、少し早めのお昼ご飯を楽しんでみてはいかがでしょうか。
NATTY DREAD
・住所:〒819-1303 福岡県糸島市志摩野北2708-17(志摩サンセットロード内に
あります)
・営業時間:11:30〜15:00(売り切れ次第閉店)
・定休日:水曜日
・駐車場:専用駐車場あり(無料)
・公式SNS:NATTY DREAD(Instagram)
6. 櫻井神社を参拝(13:50~14:20)
櫻井神社は、NATTY DREADから車で約8分の場所にあります。
寛永9年(1632年)に、福岡藩二代目藩主である黒田忠之公により創建されました。本殿・拝殿・楼門は創建当時の姿のまま残っている、福岡県指定の重要文化財です。
慶長15年(1610年)に起きた豪雨により岩戸神窟が開き、神様が現れたという逸話をきっかけに神社が建てられました。
境内には、創建した櫻井神社と伊勢神宮から分霊をした櫻井大神宮の参拝所があり、全9つの参拝所を順路に従ってお参りします。
祀られているのは、災い除け・農業や山の神、武運、航海運など、糸島の暮らしと深く関わるであろう神様たちです。
遠方の神社への参拝が困難な昔の人にとって、大きな心の支えだったろうなと、思いを馳せました。
社務所にはお守りやご朱印帳などが用意されています。自分のためにはもちろん、大切な人へのお土産として喜ばれること間違いなしです。
櫻井神社
・住所:〒819-1304 福岡県糸島市志摩桜井4227
・駐車場:専用駐車場あり(無料)
・アクセス:NATTY DREADから車で約8分
・公式サイト:櫻井神社
7. 桜井二見ヶ浦を歩き夫婦岩を見る(14:40~15:30)
糸島巡りの最後を飾るのは、櫻井神社から車で約4分の場所にある桜井二見ヶ浦です。
二見ヶ浦にある夫婦岩は、糸島観光に欠かせない有名スポットです。連日数多くの方が訪れています。
専用駐車場に車を停め、桜井二見ヶ浦を歩くと青い海に映える白い鳥居が目に飛び込んできます。
白い鳥居の向こうに並ぶふたつの大岩は、夫婦岩です。
男性の神様であるイザナギノミコト(写真右)と女性の神様であるイザナミノミコト(写真左)が寄り添い合う姿から、夫婦円満や縁結びのご利益があると信じられています。
筆者が訪れた日は晴天に恵まれ、たくさんの方が鳥居前で写真撮影を楽しんでいました。
砂浜に降りるための階段(写真手前)に腰をかけ語らい合う方も多く、みなさん思い思いの時間を過ごしていました。
玄界灘に沈んでいく夕日は、日本の夕日100選にも選ばれている絶景です。
時間に余裕がある方には、滞在時間を延長して暮れゆく夕日を眺めるなんて過ごし方もロマンティックですね。
桜井二見ヶ浦
・住所:〒819-1304 福岡県糸島市志摩桜井
・駐車場:専用駐車場あり
・アクセス:櫻井神社から車で約4分
8. 海と緑に囲まれた糸島を巡ろう
糸島は自然を通した貴重な体験で、わたしたちを非日常へ連れて行ってくれます。
今回ご紹介した糸島観光のモデルコースを参考に、海と緑に囲まれた癒しの時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
大きく息を吸い込んで思い切り伸びをしたくなるような、心地よい ひとときを味わえるはずです。
【文・写真 大塚たくま/提供元・たびこふれ】
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