【家電コンサルのお得な話・218】利便性や医療手続きの効率化を図る目的で導入された「マイナ保険証(マイナンバー健康保険証)」だが、その裏には見過ごせないデメリットも存在する。特に、現在より頻繁に持ち歩く必要が生じるため、紛失した時の手間、そして統合による個人情報管理のリスクなどは、もっと慎重に考慮されるべきである。まず、マイナ保険証は基本的に毎回受診時に提示が必要なため、マイナンバーカードを持ち歩く頻度が高くなる。デジタル庁は持ち歩くことを推奨しているが、紛失のリスクが増加する点は否めない。特に医療機関での利用頻度が高い高齢者にとっては、カードを紛失する可能性は大きな懸念となるだろう。
再発行には窓口訪問が必須、最短でも約5日
2024年12月2日以降に医療機関における受診での利用が基本となるマイナ保険証の概要は、前回の当コラムで触れているのでそちらを参照していただきたい。
<過去記事>
医療機関は混乱? いよいよ12月2日から開始の「マイナ保険証」
マイナ保険証をもし紛失した場合、24時間365日対応の専用ダイヤルに連絡して利用停止手続きを行う必要がある。再発行には市区町村の窓口への訪問が不可欠であり、2024年12月以降でも最短5日程度かかる。このように紛失した時の対応には多くの手間と時間がかかるため、日常生活における大きな負担となり得る。
また、マイナ保険証は電子証明書を用いて本人確認を行うため、システム障害や医療機関の機器が故障すると一時的に利用できなくなる。
さらに、公費負担医療制度においてもデメリットがある。マイナ保険証には公費負担受給者証の情報が紐づけられていないため、「ひとり親家庭医療費助成」や「障害者医療費助成」などの受給者証を利用する場合には従来通りの提示が必要となる。現在のところ、医療費の一部免除や助成を受ける際の利便性には一定の限界があるといえるだろう。
他にも、マイナ保険証に未対応の施設では現行の保険証が必要だったり、紛失時の個人情報の漏洩リスク、高齢者にとっての利用時の操作不安、顔認証が上手くいかない場合に暗証番号の入力が必要だったりと運用面における手間や不安が発生する。
筆者の個人的な意見だが、現状でも保険証や免許証との統合が進められているが、個人のワクチン接種歴・健康情報といった医療情報や銀行口座情報まで、政府があらゆる個人情報を把握することに大きな不安を覚える。
例えばワクチン接種歴の管理が、感染症蔓延時の強制接種や前回も見受けられた差別的な政策が強化されて実行される可能性も否定できず、情報の一元化による管理社会の到来が危惧される。
マイナ保険証は確かに利便性を提供するが、持ち歩く頻度の増加、紛失時の対応の煩雑さ、そして情報漏洩のリスクは無視できない問題である。
医療費や申告手続きの簡略化がメリットとして強調される一方で、こうしたデメリットは慎重に考慮する必要がある。社会全体としての利便性と個人のプライバシーや自由のバランスを保つために、マイナ保険証の利用には慎重な判断が求められるだろう。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)
■Profile
堀田泰希
1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。
提供元・BCN+R
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