想定される再建シナリオ
原田氏は船井電機は債務超過に陥っていないと主張しているが、なぜ代表取締役会長が関知しないなかで破産手続きが開始するという異例の事態が起きたのか。
「詳細はわかりませんが、経営が機能していなかったことの表れであることは確かでしょう。あくまで推察ではありますが、不透明な資金の流れなど、表に出したくないさまざまな事実があり、それを封印するために急いで会社を倒産させたいと考える人が、一部にいたのかもしれません」(中沢氏)
では、仮に船井電機に民事再生法が適用された場合、再建される可能性はあるのか。どのような再建シナリオが考えられるのか。
「破産から民事再生に切り替わるかどうかは裁判所が判断することで、原田氏がどんな材料で戦っているのかがわかりませんので、何ともいえません。ただ、もしも認められた場合、きちんとしたリーダーが登場すれば再建される可能性はあると思います。あれだけの実績のある会社ですから、いったんは残っているビジネスのうち戦える領域のみを残して、そこで損益トントンの状態で給料が払える人たちだけでリスタートを切るというのがオーソドックスな考え方です。2000人いた社員が1000人になるのか500人になるのか100人になるのかはわかりませんが、一度は『全員クビです』という宣告を受けているので、残れる人に給料を出せるだけでもマシだと割り切って意思決定を行えるか、社員の同意が取れるかどうかがポイントです。
あるいは極論ですが、社員全員が『どうせ失業していたのだから、黒字になるまで当面給料受け取りません』と決めたら、年間の人件費25億円(上場期の最後である2020年度のデータより推定)が浮くので、事業を残せる可能性も相応に高くなります。極論ついでですが、年金資産80億円(支払いが確定している債務は57億円)があるので、残った社員が退職金や企業年金の放棄に同意すれば、外に積み立てられていた資金を事業に回したり、いったん退職金を受け取って社員が出資者となって資金投入して事業を運営するといったかたちも手段としてはあります。
そこまで社員が身を挺して再建に取り組むという事例は聞いたことがありません。少し近い例では、日本航空(JAL)が再建の過程において、退職した社員に企業年金を放棄してもらったり、社員の給料や退職金を大きくカットしたことがありますが、それは自分たちのせいで破綻したからだという責任感もあって受け入れられたのかもしれません。ただ、報道からの推測になりますが、船井電機は以前から続く事業に携わっている社員のせいで倒れたわけではないため、相当理不尽でしょう。
社員はいったんは『全員失業、明日から給料ゼロ』と一方的な宣告を突然受けた状態なので、強烈なリーダーが崖っぷちからの再起を主導していけば、いかようにでも動ける可能性はあると思います。当然、とても困難な道ではありますが、一度は世界をリードしたFUNAIという名前への愛着が社員にどれだけ残っているかにもよるでしょう」(中沢氏)
(文=Business Journal編集部、協力=中沢光昭/リヴァイタライゼーション代表)
提供元・Business Journal
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