どちらに軍配?
さて、この二大ご当地ソースかつ丼の勝負、どちらに軍配を上げるべきだろうか。正直なところ、甲乙付けがたい勝負だった。どちらも確かな技術と長年の経験に裏打ちされた極上の一品であることは間違いない。
志多美屋のソースかつ丼は、ソースの風味を生かしながらも決して主張し過ぎることなく、カツのおいしさを最大限に引き出している。一方、とんかつ太郎のタレかつ丼は、醤油の風味を基調としながら、絶妙な甘みと塩味のバランスで、より和風な味わいを実現している。
あえて個人的な好みをいえば、醤油好きの筆者は新潟のタレかつ丼に軍配を上げたいところ。しかし、これは純粋に個人の好みの問題であって、品質や完成度を示すものではない。むしろ、普段ソース系の揚げ物を避ける筆者に「おいしい!」といわしめた志多美屋のソースかつ丼こそ、その実力の高さを証明しているともいえるだろう。
群馬のソースかつ丼、新潟のタレかつ丼。どちらも、その土地で長年愛され続けてきた理由が分かる極上の一品だった。それぞれに異なる特徴を持ちながら、どちらも揚げ物としての完成度が極めて高く、ソースかつ丼という料理の奥深さを感じさせてくれた。ということで、ここは一旦「引き分け」としよう。
いずれにしても、双方とも文句なしのソースかつ丼の名店だ。関東甲信越方面への旅の際はぜひ立ち寄ってみてほしい。きっと記憶に残る食体験が得られるだろう。それにしても、ソースかつ丼という料理が、地域によってこれほど異なる進化を遂げているなんて知らなかった。ほかの地域のソースかつ丼も気になるので、またおいしい(おもしろい?)ソースかつ丼に出会えたらレポートする。(マイカ・井上真花)
■Profile
井上真花
雑誌、書籍、新聞やWeb記事などを制作する編集プロダクション「有限会社マイカ」の代表取締役。コロナ禍を機にフルリモート体制となり、自作キャンピングカーを職場とする「バンワーク」を実践中。2024年7月に全国制覇を果たした。
提供元・BCN+R
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