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スペーシアの第3の個性はスズキらしい遊びゴコロを満載
販売好調のスズキ・スペーシアに標準/カスタムに続く第3の個性、ギアが登場した。新型スペーシア・ギアは、「10マイル・アドベンチャー」(10マイル=約16kmはKカーの一日平均走行距離)をキーワードに、アウトドアライフに欠かせないアクティブKハイトワゴンを目指して開発。チャームポイントは、「無骨かわいい」を継承したデザインと、多彩なユーティリティ、そしてスズキらしい絶妙な遊びゴコロだ。
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ラインアップはXZのターボ(64ps/98Nm)と自然吸気(49ps/58Nm)の2種。それぞれパワーユニットはマイルドハイブリッド仕様。駆動方式は4WDとFFから選べる。ベース車となるスペーシアは2023年秋のフルチェンジで、安全装備を新世代にグレードアップし、ボディ剛性を強化。騒音・静粛性対策を徹底した意欲作である。スペーシア・ギアは、その美点をそっくり受け継いでいる。
初代は、モデルライフの途中で開発がスタートした派生車種だった。そのため開発陣には、「もっとやりたいことがあった」という。新型は当初から設定が決定していたため「遊びのクルマ」として、より理想的なモデルに仕上がったと説明してくれた。
毎日がアウトドア気分。アイデア満載の室内は車中泊にも対応
スタイリングは、キャンプやアウトドアが「ブームから日常」へと変化した社会の流れを反映。毎日アウトドア気分が楽しめる点にこだわった。専用アイテムとして、丸型ヘッドライトを配したグリル、ルーフレール、前後スキッドプレートを採用。ガジェット感にこだわったディテールで道具らしさと新鮮さを演出した。
大容量コンテナをモチーフにしたボクシーフォルムと、各部の専用デザインは絶妙なハーモニーを奏でる。従来以上に大きくタフに見え、しかも安定感は抜群。サイドドアガーニッシュ部に配したオレンジの「GEARプレート」もおしゃれだ。足元は専用形状の14インチアルミと155/65R14タイヤの組み合わせになる。
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ボディカラーは、ミモザイエローパールメタリック&ガンメタリック2トーンルーフ(写真)を筆頭に、2トーン6種、モノトーン3種の全9カラーから選べる。
室内もギア独特の世界。インパネをはじめ、室内カラーは、ブラックを基調に、カーキグリーンの差し色を巧みに配したシックな印象でまとめる。シートファブリックは撥水処理済み。ラゲッジフロアは、汚れたり濡れたりした遊び道具でも安心して積み込める防汚タイプになっている。駐車ブレーキは電気式が採用され、足元スペースはすっきりとした印象。またシートヒーターにプラスして、ステアリングヒーターも新装備する。
新型は、後席ユーティリティと快適性を高めるマルチユースフラップを標準装備。これはワンタッチでレッグサポート/オットマン/荷物ストッパーの3モードに展開する後席用便利アイテム。広い後席をリビングのような「くつろぎスペース」にも、大切な荷物をしっかり支える「安心スペース」にもアレンジすることが可能だ。
室内は広く、アレンジ自在。1〜2列目シートを倒した空間をフラットに仕上げるリラックスクッションをオプションで用意する。リラックスクッションを有効活用すると、車中泊も工夫次第で快適にこなせる。スペーシア・ギアは、Kカーのコンパクトサイズながら、ユーザーのアイデアしだいで、大型モデル以上のユーティリティを発揮する「小さな大物」である。
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メカニズム面は、既存の標準/カスタムと基本的に共通。ライバルとなるデリカミニのような、オフロード走行時のタフさを高めるチューニングは行っていない。
これはギアが、アウトドアを非日常ではなく、日常と捉えているため。ギアは通常ユースの快適性、走りのスムーズさを大切にしたクルマ。そのため足回りはあえてハードな設定とはしていないのだ。とはいえジムニーやハスラーなど、悪路走破性に優れたクルマを手がけるスズキの新作である。開発陣は「キャンプサイトなどを含め、通常ユースで出会うシーンでの走破性はライバルに負けません。とくに4WDの機能性はハイレベルです」と胸を張る。
ターボ仕様のカスタムの完成度の高い走りに感銘を受けた筆者としては、そのスポーティさにも期待が高まる。ターボ仕様は、パドルシフト、パワーモードが標準装備され、フロントブレーキはベンチレーテッドタイプにグレードアップする。武骨かわいいギアでワインディングを疾走。いち早く遊びのフィールドに到達するのは、なかなか楽しそうである。
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