プーチン大統領は欧米諸国の制裁の影響を聞かれる度に、「大した影響はない」と豪語してきた。経済統計を見る限り、プーチン氏の強がりもそれなりの理由はあるわけだ。
問題は、欧米諸国の制裁にもかかわらず、ロシア経済はなぜ依然機能しているかだ。ミュンヘンのIfo経済研究所とEconpol(経済財政政策研究のための欧州ネットワーク)は新しい報告書の中で、「ロシアは旧ソ連諸国、中国、そして北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるトルコ経由で西側の経済制裁を巧みに回避している」と説明している。
同報告書によると、「ロシアのこれら近隣地域からの重要な経済物品や軍事的に重要な部品の輸入は近年急増している。例えば、アルメニア、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、トルコは2022年にはロシア経済に不可欠な物品、または軍需産業にとって重要な物品を50倍もロシアに輸出した。ロシアは現在香港から大量の半導体を輸入している。中央アジアではカザフスタンが制裁回避において主要な役割を果たしている。カザフスタンからロシアへのデータ処理機器輸出は2022年以降、劇的に増加している」という。欧米諸国にとっての懸念は、トルコの企業が制裁回避に役割を果たしていることだ。トルコはNATOの加盟国だ。
ちなみに、スイスは21日、「中立国のわが国を通じてロシア制裁を回避しようとする企業や個人に対して、より強力な措置を講じる」と発表している。ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)が報じたところによると、スイスに拠点を置く商品取引会社2社が海外子会社を通じて対ロシア制裁を回避した疑いがあるとして、スイス当局が捜査に着手した。商品取引会社は、アラブ首長国連邦(UAE)など湾岸諸国にある子会社を通じ、スイスの対ロシア制裁を回避してきたという。
欧米諸国の制裁は現時点では資源大国のロシア経済を危機に陥れるほどの影響を与えていないが、全く効果がないかというとそうとは言えない。ボクサーがボディーブローを受け続けると、ラウンドを重ねるのにつれて効いてくるように、欧米諸国の対ロシア制裁は多分、ボクサーのボディーブローだろう。その効果が出るまで制裁を続ける以外にない。懸念は、ボディーブローを受け続けているボクサー(ロシア)が倒れる前に、制裁を科す側(欧米諸国)が叩き疲れたり、息切れしないかという点だ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年2月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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