シナリオ2では、ウクライナ軍の反転攻勢が成功したケースにおけるロシア軍に残された戦車数をシミュレーションしています。このシナリオでは、T-72Bシリーズは2025年にもっとも車両数の多い戦車ではなくなると予想されます。当然ですが、それ以外のシリーズも影響を受け、2023年末に合計で約250両になると予測しています。

IARは、この車両数ではもはや機甲師団のような大規模な一貫した部隊の構成または再構成を『複雑』にすると評価しており、活発な重装甲部隊を編成できなければ、ウクライナだけでなく従来のロシア連邦国境でも地上部隊は防御的な構成になるだろうと予想しています。

ロシアの戦車と言えば、敵の防衛線の弱いところに大規模な機構部隊を突入させて支配地域を広げていくというイメージを私は従来から持っていました。小泉悠先生と高橋杉雄先生の対談動画でも、ソ連時代から陸軍ではそのような機構部隊の運用が教育されていると趣旨の話がありました。しかしIARのリポートを読むと、ウクライナ戦争で多数の戦車を消耗しているロシア軍は、そのような攻勢を可能にできる機甲部隊の運用だけでなく編成も難しくなっていくと予想されます。

ウクライナ戦争がどのような形で終戦を迎えるのか、現時点では分かりませんが、ロシア軍がかつての姿を取り戻すには何年もかかるのではないかと思われます。

大田 位(おおた ただし) 社会人。日本に関連しそうな海外記事が好き。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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