槙野智章氏 写真:Getty Images

 日本女子代表(なでしこジャパン)は今月24日開催のパリ五輪アジア最終予選第1戦で、北朝鮮代表相手に0-0と引き分け。この試合が中立地のサウジアラビアで開催された一方、森保ジャパンは今年3月26日開催の北中米W杯アジア2次予選を平壌で戦う予定だ。13年ぶりとなる北朝鮮での日本戦開催が濃厚とみられる中、2011年11月のブラジルW杯アジア3次予選を平壌で戦った槙野智章氏が、当時の過酷な状況やアウェイの洗礼を明かしている。

 槙野氏は今月25日放送の『ABEMAスポーツタイム』に出演した際、パリ五輪アジア最終予選の試合開催地がキックオフ3日前に正式決定したことについて「絶対にあり得ない」と断言。森保ジャパンが平壌で試合に臨む可能性について、元プロ野球選手の川崎宗則氏から「想像つかないし、そもそも(北朝鮮に)入れるの?」と訊かれると、北朝鮮入国までの過程について「よく北朝鮮に入れたなと(思った)。中国経由で入国したけど、パソコン、iPad、携帯電話など、空港ですべて没収される。シェフが用意した食材も空港で没収された」とコメント。北朝鮮入国後に「かなり難しかったこと」として、以下のように語っている。

 「空港からホテルまで大体バスで15分かかるけど、4時間かけていた。同じような道をグルグル回っていた。試合までのストレスを与えたいという目的があったと思う。iPadや携帯電話を持っていないので『ホテルどこなの?』『こんな遠いんだ…』という感覚でずっと外を見ていた」

 「ホテルには時計がないし、(自分たちが持っている)時計は没収される。携帯電話もないので、今どれくらい動いているのか分からない。全部体内時計で動いていた。部屋の中は鏡張りで、ずっと軍歌が流れている。部屋の前には軍隊がいる。ずっと見張られている。そんな異様なホテルの暮らしやバスの移動を経て、試合会場に入るという感じだった」

 そして試合会場である金日成スタジアムの雰囲気については「試合は行われたけど、一番難しかったのはスタンドにいる人々がほぼ軍隊で男性(ということ)。女性は入っていない。異様な空気の中で行われたし、国際大会を人工芝でプレーすることはほとんどなかった」と、アジャストの難しさを説明。「試合ももちろんタフだけど、試合までの時間の作り方やアプローチの部分でもかなり難しい」と締め括った。

 なお2011年11月に平壌で開催された北朝鮮戦では、FW岡崎慎司(シント=トロイデンVV)やMF長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)、MF今野泰幸(南葛FC)らがスタメン出場。Jリーグ複数クラブでのプレー経験を持つ鄭大世がシュートで日本のゴールを脅かすと、日本は0-1で敗れている。