イギリスとフランス両国は自国の巡航ミサイル「ストームシャドウ」と「スカルプ」をウクライナに供与済みだが、ドイツは長距離巡航ミサイル「タウルス」の供与問題でキーウ側の重なる要請にもかかわらず拒否し続けてきた。
ショルツ独首相は、「タウルスは射程距離500キロだ。ウクライナ領土を超えてロシア領土まで飛行した場合、ロシア側の反発が予想される」として、対ウクライナ武器支援では常に「ウクライナ戦争をこれ以上エスカレートさせない」というレッドラインを堅持しなければならないと説明してきた。
ところで、ウクライナ軍は6日から国境を接するロシア西部クルスク州に進軍中だ。アメリカに拠点を置くシンクタンク「戦争研究所」(ISW)によると、ウクライナ部隊が9日段階でロシア国境から「最大35キロメートルの地点まで」進攻したと発表した。すなわち、戦争はロシア領土内に拡大してきているわけだ。
ゼレンスキー大統領は8日夜の演説で、「ウクライナはロシア軍の侵攻に直面し、ロシアとの戦争を強いられてきた。国民は戦争の悲惨さを体験している。ロシアがウクライナに戦争をもたらしたのだから、今度はロシア側が『自分たちが何をしたか』を感じるべきだ」と述べている。戦争はもはやウクライナ領土内だけではなく、ロシア領土まで広がってきたわけだ。
プーチン大統領は2022年2月、「特別軍事作戦」と表明してウクライナに侵攻したが、戦争とは呼ばなかった。だが、ウクライナ軍の攻勢を受け、状況はロシアとウクライナ間の戦争の様相を深めてきた。プーチン氏はウクライナ軍のクルスク進攻に驚かされているわけだ。
ロシア軍はクルスク地域へのウクライナ軍の進撃を阻止できず、軍の強化のために追加の部隊を派遣せざるを得なくなっている。ロシア国防省は9日、ロケット砲、砲兵、戦車、重トラックを装備した部隊をクルスクに派遣すると発表した。ロシアの発表によると、部隊はウクライナ軍の攻撃を引き続き阻止しているというが、ロシアとウクライナ両軍の軍事情報は錯綜し、確認できない。