中国の不動産大手「融創中国」(本社天津市)がアメリカ・ニューヨーク州の連邦破産裁判所へ破産法第15条(外国籍企業に対する法的整理を対象にした法律)を申請していることが9月19日に明らかになった。2003年設立の同社は、大規模住宅や商業施設・オフィスビルなどを手掛けるデベロッパーで、2010年には香港証券取引所へ上場。2021年の住宅販売額で中国3位、住宅販売数では中国第4位の大手企業に成長していた。しかし2020年の中国政府による不動産業者への規制強化で資金調達が厳しくなって、2022年5月に一部(社債)の利払いが不可能になり債務不履行が表面化。2023年6月時には負債総額が約1兆元(約20兆円)にまで膨れ上がっていた。
これに1カ月先立つ8月17日には同じ裁判所に中国第2位の不動産業者「恒大集団」(本社広東省深圳)が破産第15条を申請していた。営業は継続中だが、一部の社債の利払い停止の債務不履行が続いている。今回の破産申請は、今年7月に発表した2022年末時点では5991億元(約11兆6000億円)にのぼる外貨建て債務の再編が狙いだ。借り換えができるものは借り換えて、状況が好転するのを待つということだろう。
ちなみに、融創中国も恒大集団もタックスヘイブンのケイマン諸島にも登記を行っている。海外には「隠し資産」「隠し預金」的なものがあるかもしれない。
「恒大集団」はファミリー企業だが香港株式市場に上場しており、取り引きも行われている。ちなみに9月22日の株価は0.55香港ドル(1香港ドル=18円88銭)で日本円に換算して約10円だ。
ここで読者が不思議に思われることを解説しておこう。なぜ「融創中国」も「恒大集団」も破産申請を中国の裁判所にせずに、アメリカ・ニューヨークの裁判所に申請しているのか?という疑問だ。これは、中国では「破産」という概念が法律上認められていないからだと言われている。中国の裁判所に破産申請をしても「却下」されるだけなのだという。このあたりが共産主義国家の不思議なところ。
ついでに、土地は中国では国家のもの(国民所有と農民集団所有)だから、それを売買する不動産業というのも成立しないのでは?という疑問もあるだろう。これも正確には土地の使用権を国(地方政府)から許可されれば取得できる。取得した土地の使用権は法律に従い譲渡・賃貸・抵当することができる。中国の国内総生産(GDP)に占める不動産関連は30%に及んでいる。今後も最大手の碧桂園破綻もほぼ確実であり、「破産を認めない国である中国」がどんな策を打ってくるかが注目である。
すでに、中国国家金融監督管理総局は9月16日恒大集団が同社の保険事業「恒大人寿保険」を売却するのを認めている。売却先は海港人寿保険だ。売却額は公表していない。こうした経営再建で中国大手不動産が危機から脱出できるのか、大いに注目である。
文・三浦彰/提供元・SEVENTIE TWO
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