パチンコホール業界最大手のマルハンの初任給や年収、労働時間・環境、福利厚生などの待遇が非常に良いとして、一部ネット上で話題を呼んでいる。初任給は学歴問わず24万4300円~で賞与は年2回、各種手当も充実。休日休暇は年間116日で週休2日以上、月の平均残業時間は8.7時間で、育児休暇や介護休暇も取得可能となっているが、現在、パチンコ業界はホワイトな労働環境になっているのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。

 マルハンの業績は好調だ。24年3月期の売上高は1兆4345億円、営業利益は197億円で前期比で増収増益。グループ従業員数は約2万2000人。れっきとした「1兆円企業」の顔を持つ。同社の経営の強みとなっているのが、非パチンコ事業だ。パチンコを中核事業に据えつつ、飲食施設や各種レジャー施設、温泉旅館、ゴルフ場なども経営し、ビルメンテナンス事業や金融事業にも進出。事業領域は26業種、進出国は8カ国、事業所数は約1130拠点にのぼる。22年3月期のセグメント別利益をみてみると、パチンコ事業の約109億円に対し、金融事業は約84億円、その他が約43億円となっており、パチンコ産業の縮小を見据えて堅実に事業の多角化に励んでいる様子がうかがえる。

 そんな同社は毎年100人単位で新卒採用を行っている。パチンコ業界をはじめとするアミューズメント業界は長時間労働で休日が少ないというイメージもあるが、マルハン公式サイトの採用ページによれば、1日あたりの実働8時間の勤務時間を基準とした変形労働時間制を導入しており、公休は1週間あたり2日以上。福利厚生としては、独身者は月1万8000円、家族帯同者は月2万5000円からの自己負担で住める社宅が用意されており、家族手当・寒冷地赴任手当・帰省旅費手当など各種手当も支給。社員と家族の誕生日や学校行事、自己学習、リフレッシュ(レジャー、美容、健康診断)などのために有給休暇を取得することを推進している。

高い待遇維持の背景

 気になる業務内容と給与はどうなっているのか。主にホール業務・バックオフィス業務・遊技機関連業務の3つに分けられ、ホール業務はホールの運営、バックオフィス業務は各種営業戦略設計や店舗の状態管理、遊技機関連業務は遊技台や遊技設備に関する管理業務、新台入替業務などがメインだ。年収モデルは、店長は約820~1100万円、エリア長は約1400万円、営業部長は約1800万円。

「パチンコホール業界でマルハンは事業規模的には突出した存在。長期的にみればパチンコ事業の売上は低下していくため、ゴルフ場や宿泊施設、レジャー施設の運営から不動産関連、金融、人材、そして海外事業と幅広く手掛けており、もはや一パチンコ企業の域を超えている。実態としては一般的な大企業と変わりがないのではないか。パチンコ業界は過去の経緯・実態なども影響し、イメージが良いとはいえず、新卒の就職先としては選ばれにくいため、労働環境や待遇を他の業界以上に良くしておかないと人材の獲得競争で負けてしまう。特にマルハンはIT事業、金融事業、レジャー事業に力を入れており、こうした領域で高い専門性を持つ優秀な人材を獲得してつなぎとめておく必要があり、高い待遇の維持を意識していると思われる」(元遊技メーカー社員)

 人事コンサルタントはいう。

「同じアミューズメント企業でも、東京ディズニーリゾート運営会社のオリエンタルランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)運営企業のユー・エス・ジェイなどは、パーク自体のファンも多くイメージも良いので、比較的、人材を採用しやすい。一方、そのほかのレジャー施設企業やカラオケ運営企業などは平均給与は低めで、MARCHクラス以上の学歴を求めない業界で採用人数が多い業種としては飲食や小売もあるが、大手であっても平均給与は低め。こうした現状のなかでマルハンは、上位大学以外の学生にとっては狙い目の企業の一つといえるかもしれない。ただ、待遇や労働環境が良いといっても、それなりに実力主義の職場であるとは思われ、本当に自分の性格や価値観に合う企業なのかどうか十分な自己分析が必要だろう」

(文=Business Journal編集部)

提供元・Business Journal

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