ソフトトップは5層構造。走行中でも開閉操作が可能
ローマ・スパイダーは、マラネッロ製FRオープンとしてはデイトナ・スパイダー(365GTS/4)以来となる実に54年ぶりのソフトトップモデルである。
トップは五層構造。吸音効果の高い素材を挟み込んでいる。実にしっかりとした作りだ。骨組みは軽量なZ構造タイプで、リアスクリーンと共に格納スペースに収まる。開閉時間は13.5秒。時速60kmまでなら走行中でも操作可能だ。
トップは素材にもこだわった。とくにカラートップでは格子状に生地を織り込んで独特の光沢と立体感を表現する。コントラストを楽しむというソフトトップの魅力がいっそう増した。オーナーの選択センスが問われる部分だ。
インテリア形状は基本的にクーペと同じ。リアシートは穴の空いた大きな板がシートバックと一体になっている。この大きな板はウィンドディフレクターで、トップ開閉と対になったスイッチを押せばゆっくりと跳ね上がる(時速170kmまで操作可能)。展開しておけば超高速域でもキャビンの風の流れは適度。ちなみに収納は手動式だ。
オープン化による重量増は84kg。サイドシルやAピラー構造がクーペと異なる。サスペンションの制御をはじめ動的なキャリブレーションもスパイダー専用だ。そのほか装備の進化としてレーンキープアシストと緊急ブレーキの備わった最新のADASを挙げておこう。このADASは今後、クーペにも装備される。
パワートレーンは最高出力620ps/最大トルク760Nmの4リッター・V8ツインターボと8速DCTの組み合わせ。パフォーマンスは素晴らしく、メーカー公表の加速スペックは0→100km/hがクーペと共通の3.4秒、重量差が効いてくる0→200km/hでも0.4秒落ちの9.7秒だ。つまり十分に速い。
オープン状態では、風を感じるぶんクーペ以上の速さを感じた。クルマ好きにはたまらないエグゾーストサウンドのシャワーも高揚感をいっそう増幅させる。
乗り味は洗練。クーペより僅かに良い。前輪のつっぱり感が薄れ、ハンドルを握る両手との一体感にしなやかさが増した。ステアリング操作と正確にシンクロする前輪の動きは、さらに精緻さが増し、足回りのリアクションは自然でスムース、正確なだけでなく気持ちいいと思えるレベルに達している。ブレーキのフィールも確実で剛性感たっぷり。減速すら楽しい。
ステアリングを切るだけで気持ちが昂るスポーツカーなんて今どき他にない。目を三角にして走らせなくともそう思えるのだから、たいしたものだ。スパイダーは、来るべき電動化時代のドライビングファンをも見据えている。今、ドライブフィールが最も甘美なスポーツカーである。
フェラーリ・ローマ 主要諸元
モデル=ローマ・スパイダー
価格=8DCT 3280万円
全長×全幅×全高=4656×1974×1306mm
ホイールベース=2670mm
乾燥車重=1556kg
エンジン=3855cc・V8DOHC32Vツインターボ
最高出力=456k W(620hp)/5750〜7500rpm
最大トルク=760Nm(77. 5kg・m)/3000~5750rpm
サスペンション=前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ=前245/35ZR20/後285/35ZR20
駆動方式=FR
乗車定員=4名
0→100km/h加速=3.4秒
0→200km/h加速=9.7秒
最高速度=320km/h
※価格を除き、スペックは欧州仕様
提供元・CAR and DRIVER
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