アテネに来てから、アクロポリスや古代アゴラなどの遺跡、プラカやモナスティラキの街散歩、アクロポリス博物館や考古学博物館など、センターの観光名所は見終わってしまったけれど、あと1日フリーデーがあるとしたら、どこに行きましょうか?
今日ご紹介するのは、アテネからちょっと郊外に足をのばし、開放的なリゾート感あふれる海沿いのアポロコーストを通り、クリスタルのように輝く蒼い海を満喫しながら、夕日の名所スニオン岬まで行くコースです。
アテネから南に約70km、エーゲ海を見下ろす断崖絶壁のスニオン岬は、ギリシャのアッティカ半島の最南端。古代ギリシャの歴史と神話、そして自然の絶景が融合した素晴らしいパワースポットです。
また、この岬から見るエーゲ海に沈む夕日は、世界的にも有名で感動モノ。アテネの雑踏とはうってかわって、雄大な自然と歴史の深みを堪能できること間違いなしです!
目次
1. スニオン岬の歴史と神話
スニオン岬は、その地の利から紀元前5世紀頃より重要な港として栄え、海の神ポセイドンを祀る神殿が建てられました。宗教的な場であると同時に、海路を見渡せるので戦略的な要地としても機能していたのです。
ギリシャ神話にも、スニオン岬は登場します。それは、アテナイ王アイゲウスとその息子テーセウスにまつわる悲劇的な物語。
『アテナイ(古代ギリシャの都市国家)は、クレタ島のミノス王から、迷宮に住む怪物ミノタウロスへの生贄として、若者を捧げることを強いられていました。テーセウスはこの悪しき慣習を終わらせるべく、自らミノタウロス退治の任に就いたのです。
出発前、アイゲウス王は息子に生還の際の合図として、船の帆を「黒から白に変えるように」と伝えました。ミノタウロスを倒し、無事に任務を果たしたテーセウスはアテナイへ帰る途中、喜びのあまり、帆を白に変えるという父との約束を忘れてしまいました。
スニオン岬で息子の乗る船の帰還を待ちわびていたアイゲウス王は、黒い帆を見てテーセウスが死んだものだと誤解し、悲しみに暮れて海に身を投じてしまいました。
この出来事により、アイゲウス王が散った海は彼の名前に因んで「エーゲ海」と呼ばれるようになったのです。』
<アイゲウス王が身を投げた海の色>
この神話をイメージしながらスニオン岬からエーゲ海を見渡せば、また感慨も深まるのではないでしょうか。
2. スニオン岬の見どころ:ポセイドン神殿
ポセイドン神殿は、海の神ポセイドンを祀ったドーリア様式の柱が美しい神殿。その荘厳な佇まいは、訪れるすべての人を圧倒します。
ポセイドン神殿は、アテナイの黄金時代と呼ばれる紀元前5世紀中頃に、政治家ペリクレスの指揮下で建造されました。アクロポリスのパルテノン神殿と同様、重厚なドーリア様式の建築で、完成時には34本の石柱が立っていましたが、現在は高さ約6mの15本の白い大理石の石柱が残っています。
海から見ても一際目を引く神殿は、船乗りたちにとって安全を祈願する重要なランドマークでした。神殿は海抜60mの高さにあり、そこから一望するエーゲ海と夕日は、まさに絶景です。
3. ポセイドンとはどんな神様?
ここに祀られているポセイドンは、ギリシャ神話では「海、地震、そして馬を司る神」として有名。オリンポス12神の一柱であり、ゼウス(天空と雷を司る神)とハデス(冥界の神)の兄弟です。
この3人の兄弟は、神話的には世界を分け合うことで、それぞれの領域を治めるようになりました。ゼウスが天空を、ハデスは冥界を統治する一方、ポセイドンは海を支配することになったのです
1.シンボル:ポセイドンの象徴で最も有名なのは三叉の槍(トライデント)。このトライデントで海をかき乱したり、地震を引き起こしたりする力を持っているとされています
2. 性格:ポセイドンはしばしば荒々しい性格で知られ、気まぐれで怒りやすい一面が。彼の気分により、海は穏やかにも暴風を巻き起こすようにも変わります
3. 神話での役割:ギリシャ神話にも頻繁に登場し、人間や他の神々とのエピソードがたくさんあります。例えば、アテネの都市守護神の地位を巡ってアテナ女神と争い、結果的に敗れたエピソードは有名。また、英雄オデュッセウスの旅路を妨げる、厄介な存在としても知られています
ポセイドンは、海を支配する力強い神であり、その影響力は古代ギリシャの文化や航海においても絶大!海の神としての彼のイメージは、西洋文化で広く知られ、後世の多くの芸術や文学作品にも影響を与えています。
4. イギリスの詩人バイロンとスニオン岬
スニオン岬は、イギリスの詩人バイロンが愛したことでも知られています。バイロン卿とスニオンの関係は、19世紀初頭にバイロンがヨーロッパ旅行中にギリシャを訪れた時までさかのぼります。
バイロンはギリシャの歴史、文化や風景に深く感銘を受け、それが彼の詩作に大きな影響を与えました。彼の「ドン・ジュアン(ファン)」という詩の中でも、スニオン岬が登場します。
スニオン岬では、バイロンが神殿の柱の1つに自分の名を刻んだと言われていて、この真偽は明らかではありませんが、バイロンのギリシャ愛を象徴する逸話となっています。
<バイロンが名前を刻んだと言われるのはどの柱?>
彼はギリシャ独立戦争を熱心に支援し、実際に戦いにまで参加してギリシャの国民的英雄の1人となりました。
あなたもスニオン岬で夕日を見れば、バイロンのように芸術的なインスピレーションが湧いてくるかもしれません。
<夕日に歓声をあげる人々>
5. スニオン岬の途中で寄り道 :リゾート気分のブリヤグメニ
アポロコーストには、アステラ、ヴ―ラ、ブリヤグメニ、ヴァルキザ、ラゴニシなどの美しいビーチが目白押しなのですが、スニオン岬に行く途中で寄り道をする時間があるならば、ブリヤグメニがおすすめです。
<広い砂浜のビーチ>
ブリヤグメニには、サンベッドやパラソル、カフェなどがある有料ビーチ、無料でも泳げるワイルドなビーチ、温泉効果のあるブリヤグメニ湖、眺めの良いシーフードレストランなどがあって楽しめます。
<施設が整っていて芝生も綺麗な有料ビーチ>
<若者に人気のワイルドなビーチ>
ブリヤグメニ湖は、温泉効果のある天然のスパとも呼ばれ、リフレッシュに最適。地下から湧き出る温泉水と海水が混ざり合い、湖の水温は1年中比較的安定しており、約21~28度に保たれています。
<かつては洞窟だったという荒々しい自然の景観>
ミネラル豊富な湖水は皮膚病や関節痛、美容にも効果があるとされているため、治療のために訪れる人も1年中います。また、ドクターフィッシュという黒い小魚がたくさん生息しており、足をつけるとたくさん集まってきて、角質除去も体験できますよ。
<ドクターフィッシュと戯れるのも楽しい癒しの時間>
Lake Vouliagmeni
- 所在地:ギリシャ 166 71, Vouliagmeni
6. ランチスポットは、海を眺めながらシーフード
<隣の芝生と海風が気持ちいい開放的なレストラン>
ブリヤグメニ湖から道路を渡って右斜め前にあるSardelaki me Thea(サルデラキ・メ・セア)は、輝く海やヨットを眺めながら、カジュアルに食事ができるレストラン。絶景と新鮮なシーフードを両方楽しめます。
<この日は21種類の選択肢がある前菜>
ここの名物は、最初に出てくる圧巻の前菜の数々。この前菜の中には、ジャジキというヨーグルトディップ、ナスのサラダ(ディップ)、タラモサラダ、ムール貝やいわしや野菜のマリネ、魚の燻製、豆のディップ、ドルマダキというぶどうの葉の米包みなど、ギリシャの伝統料理もあり、思わず目移りしてしまいます。
好きな皿を選んで、すぐに空腹を満たしながら、熱々のイカのフライ、タコやサーディンのグリル、シーフードパスタなどメイン料理を注文できるのが嬉しいですね。
<香ばしいサーディンのグリルにトマトが爽やか>
<タラモサラダ、ナスのディップはパンに良く合う>
Sardelaki me Thea
- 住所:Leof. Poseidonos 18, Vouliagmeni 166 71 ギリシャ
- 電話番号:+302109670913
- 定休日:年中無休
- 営業時間:9:00~23:30
- 公式Facebook: Sardelaki me Thea
このレストランの横には、ちょっと遊べるビーチもありますよ。
高級なシーフードレストランがお好みならば、隣にある「Lambros」もおすすめです。
7. ポセイドン神殿遺跡情報
日没とともに閉館。日没時間を調べて、その1時間前位に着くように計画しましょう。サンセット時は特に混雑するため、ぎりぎりだと入れない可能性があるので注意して下さい。
<遺跡の入り口には、カフェと売店がある>
Temple of Poseidon
- 住所:M22F+3R, Lavrio 195 00 ギリシャ
- 入場料:ポセイドン神殿 10ユーロ(2024年10月現在)
- 開館時間:日没とともに閉館。
8. アテネからのアクセス
<日没直前のエーゲ海>
公共バス
- アテネ中心部のPedion Areos公園からKTELバスで約2時間 KTELバス
※内陸経由の場合はアポロコーストは通りません。
バスツアー
- 多くの旅行会社が半日ツアーを提供 アテネ:スニオン岬ツアー
専用車やタクシーによる個人ツアー
- 個人ツアーアテネ在住日本人が旅の案内ガイド
公共のバスは本数も少なく、時間もあてにならないので、個人ツアーか、アテネからのサンセットバスツアーなどを利用すると良いでしょう。
スニオン岬は、ギリシャの歴史、神話、そして自然の美しさを一挙に体験できる素晴らしい観光スポットです。アテネ滞在時に時間があったら、ぜひ、立ち寄ってくださいね。
文・写真・サラサ/提供元・たびこふれ
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