ハイリスク、ハイリターンは、投資家の資産選択における選好に関する仮定であり、その仮定に基づく資産価格形成に関する理論的要請であって、事実ではない。あるいは、機関投資家、即ち、社会的責任を負った投資主体の場合には、ハイリスク、ハイリターンは、規範的要請だと考えられる。つまり、社会的責任の果たし方の一つは、合理的に説明できることだから、ハイリスクな投資対象に対しては、ハイリターンを期待しなければならない、そうでなければ、投資判断の合理性が保てないと理解されるべきなのである。

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投資の損益は利息配当金等と価格変動とで構成されるが、リスクの多くを規定するのは価格変動である。そして、常識的な言葉使いとしては、リスクの大きな資産とは、価格変動の大きな資産を意味し、逆に、安全な資産とは、預金のような価格変動のない資産を意味していて、リスクとは、価格が大きく下落する可能性を指していると思われる。

リスクとリターンの完全に等しい二つの資産があって、それらの価格は、一方の上下変動に対応して、他方は全く同じ騰落幅で逆向きに上下変動するとすれば、二つに等金額を投資すれば、リターンは変わらずに、リスクはゼロになる。これが分散効果と呼ばれるものである。

この例のような完璧な分散効果はあり得ないが、二つの資産が完全に同一方向に価格変動することもあり得ないので、どの資産についても、他の資産との間に一定の分散効果がある。投資の基本が分散だという意味は、単に複数の資産に投資しろということではなく、分散効果が大きくなるように、複数の投資対象を選択し、資産配分、即ち、各資産への配分比率の決定を行えということなのである。

こうして、ハイリスクな投資対象は、他のハイリスクな投資対象とともに投資されるとき、分散効果によって、ハイリターンを維持しつつ、ハイリスクであることを緩和できるのだから、ハイリスク、ハイリターンは、分散投資を前提にしてこそ、重要な意味をもつのである。