「タンガニーカ」という国をご存知だろうか。インド洋に面したアフリカ南東部に、かつて存在した国家だ。1964年に同国とザンジバルが連合し、「タンザニア連合共和国」となったため、現在のタンザニアの旧国名といえばわかりやすいかもしれない。タンガニーカという呼称は、今では同国大陸部の地域名となっている。そんな日本とはあまり馴染みのない国で、今から60年ほど前、世にも不思議な病が席巻したという――。
■生徒たちの笑いが止まらない怪現象
1962年1月31日、タンガニーカのビクトリア湖西海岸にあるカシャシャという村で発生した奇病は、通称「タンガニーカの笑い伝染病(Tanganyika laughter epidemic)」と呼ばれ、村人たちを震え上がらせた。文字通り、笑いがうつる伝染病なのだ。
すべては、村にあるミッション系全寮制女子校から始まった。突然、3人の生徒がわけもなく笑い出したのである。最初、教師も怪訝に思いながらも場当たり的に対処していたが、みるみる収拾がつかなくなっていき、気がつけば校内のほとんどの女の子たちが笑い転げていたという。
異様な光景に恐れをなした教師たちが次々と職場放棄したため、学校は閉鎖に追い込まれた。しかし、それだけでは終わらなかった。寄宿舎を締め出され自宅へ戻った生徒から他校へ通う子どもへと不可解な笑いは感染し、またたく間にカシャシャ村から近隣の村、さらには隣国ウガンダへと飛び火し、深刻な社会現象化していったのである。12~18歳までの子どもたちを中心に広がった病は、最終的に14の学校と1000人以上の人々に影響を及ぼすに至った。
タンガニーカ人は、この奇妙な現象を「オムニェポ(笑う病気)」と呼んだ。確かに笑いは伝染するが、ほとんどの場合自然発生的な感情表出に過ぎない。しかし、オムニェポには実害があった。笑いすぎで全身の痛みや疲労感、失神、呼吸困難、しまいには怒りや攻撃性、悲鳴が引き起こされたのだ。発作は数時間~16日も続いたと記録されている。
笑いが止まらなくて寝たきりになる子さえ出たにもかかわらず、医者も科学者も暴発の直接原因を見つけられなかった。しかもオムニェポは始まった時と同じように、1年半後に突如としてやんだため、研究チームはますます頭を抱えることになった。いったい何が起こったのだろうか? 一説によると、慢性的なストレスが原因で発生した集団ヒステリーなのではとされている。
「今日では、集団心因性疾患(MPI)と呼ばれています。心因性のもので、症状を示した集団には共通するストレス要因が根底にあります。たいていは、力のない人たちの間で発生します。MPIは、地位の低い人たちの最終手段です。『何かが間違っている』ということを表現するためのシンプルな方法なのです。そのためか、女性に多く見られるようになりました。これは文化依存的な疾患といえるでしょう」(パデュー大学のクリスチャン・F・ヘンペルマン博士)
タンガニーカは1962年当時、独立を勝ち取ったばかりだった。そのため、エリートの子女が学ぶ寄宿学校では、教師や保護者からの期待も高く、生徒たちはストレスを感じていたと報告されている。
笑いは喜びをもたらし、ストレスを解き放ち、病が立ち消えることだってある百薬の長なのだ。ただし、ストレスからくる笑いのノンストップには、くれぐれも注意したい。
提供元・TOCANA
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