このたびの天皇の御参拝は、本年春、靖国神社から口頭で終戦三十年につき御参拝願いたい旨の申出があり、昭和四十年十月には終戦二十年につき御参拝になっておられる経緯もあって行われたものである。

御参拝は、天皇の純粋に私人としてのお立場からなされたものであつて、全く政治的な目的を有していない。

天皇が私的なお立場で靖国神社に御参拝になることが日本国憲法の破壊に通じるものとは認められないので、内閣としては、御参拝を中止されるよう助言する考えはない。

この様に政府には、「天皇の私的なお立場」でのご参拝を「内閣としては、御参拝を中止されるよう助言する考えはない」という歴とした公式見解がある。

従って、石破氏が「天皇陛下がご親拝できる環境が整わない限り、行わない」と述べたことは、この75年の政府見解とは異なる見解をお持ちである、ということになる。

では、吉田議員のいう「憲法違反の法制定」とは何かといえば、それは靖国神社を日本政府の管理下に移し、政府が英霊を慰める儀式・行事を行おうという「靖国神社法案」である。

同法案は、議論開始から10年経った74年5月に衆議院本会議で野党欠席のまま記録上は全会一致で修正議決し、参議院に送付されたが、参院では委員会に付されぬまま6月に会期終了となり、審議未了廃案となったのである。

吉田議員は質問書でこう述べている。

これは憲法違反として五度審議未了となった「靖国神社法案」及びその代わりに制定が推進されている「慰霊表敬法案」の重要な中味である「靖国神社の国家護持」と「天皇の靖国神社親拝」を、法成立の事前に実現し、三木首相の靖国神社参拝と共に既成事実を積み重ね、憲法違反の法制定を推進しようとするものである。

かかる問題のある天皇の靖国神社参拝について、社会、公明、共産等各党が反対を表明し、多くの宗教団体関係者が反対しており、このように国論を二分するがごとき行為は「国民統合の象徴」といわれる天皇のなさるべき行為ではない。