人間がある時突如とし姿を消してしまうという事件は、日本においても「神隠し」として耳にすることは多い。しかし、姿を消すのが一人や二人ではなく、集団であるというケースも世界にはある。
これは1930年11月のカナダで起こったとされる事件である。毛皮猟師ジョー・ラベルはその日、 猟の最中ひどい吹雪に襲われることとなった。野営をしようと、 ヌナブト準州のアンギクニ湖付近にあるイヌイットの村へ行こうと考えた。彼はその村を何度か訪れたこともあって付き合いもあったために頼ろうと向かっていたのだが、到着してみると奇妙な光景が広がっていた。この村には本来1, 200人~2, 500人という規模の人々が生活をしているはずなのだが、 誰一人として姿が見えないというのだ。
私物が置いたままにされ薪も火が点いたままになっており、食器や料理がそのまま置かれていた。 カヤックも打ち捨てられたままの状態であり、当初は村人たちが何らかの事情で村を放棄したのではないかとも考 えられた。ところが奇妙なことに、それほどの人数が移動したにしてはまるでそのような痕跡が見られ ない。何より、イヌイットにとって生活必需品とも言えるライフルが放置されていたのである。これらの光景は、 まるでつい先ほどまでいたはずの大勢の村人が突然消滅してしまったかのようなものであった。
ラベルの通報を受けてカナダ王室の騎馬警察隊が現場を訪れ調査が行なわれた。結局、村人は誰一人として見つからなかったものの、他の奇妙な点も浮き彫りになった。立木につながれていたエスキモー犬が皆餓死しており、さらに墓が掘り起され埋葬されていた遺体まで消えていたというのだ。また警察隊が他の何人かの猟師に聞き込みをしたところ、ラベルが村を訪れる前の晩に、光る飛行物体がアンギクニ湖の方へ飛んで行ったという情報が得ら れたというのだ。
19世紀にポルトガル沖で発見され、船員乗客が全て消えていたというメアリー・ セレスト号のような話である。この事件は、不可解な未解決事件として現在まで語られているというが、 最後の「光る飛行物体」の証言からすれば、この集団消失にはエイリアンの何らかの関与があるに違いないと考えるのも当然と言えるだろう。
しかしながら、そもそもカナダ王室騎馬警察の公式HPは、この事件を「豆知識と都市伝説」という項目の中で「 実話ではない」「記録にもない」「そのような村は存在しない」 とハッキリ否定しているのだ。この事件が知られるきっかけとなったのは、 アメリカの作家フランク・エドワーズという人物の著書『 Stranger than Science』(1959)という本であり、この本は世界で100万部を売り上げるベストセラーとなったが、騎馬警察はこの内容についても全く根拠がないと明言している。この公式発表が事実であるならば、一つの村の集団消失は創作であったと言えるだろう。
近年では、 1980年代に中国の晶山村で一夜にして村人1000人が皆消えてしまったというニュースが、 2010年に中国メディアで取り上げられていた。この事件も、大人数の移動の痕跡も無く食事や日用品が放置されたままで 村付近がUFOの目撃多発地であるという説明がなされていたが、 の話の発端はネット上の書き込みであったとされ、 村があったという陝西(せんせい) 省に現在あるいは古くから住む人々も、聞いたことが無い話であるという。この事件も、 アンギクニ湖事件のパロディ、もしくは村人全員が消失という同型のモチーフに基づいた派生的な都市伝説であると言えるだろう。
【参考記事・文献】
Royal Canadian Mounted Police – Fun facts and urban legends
村人全員が消失したイヌイットの集落
1000人以上の村人が一夜にして失踪、 20年の時を経て報道された理由とは
【文 黒蠍けいすけ】
【本記事は「ミステリーニュースステーション・ATLAS(アトラス)」からの提供です】
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提供元・TOCANA
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