「コロナで42万人死ぬ」と風説を流布して、日本社会を恐怖に陥れた西浦博氏が「失敗したら腹を切って死んでお詫びするつもりだった」と言って話題になっています。「何もしなかったら」というのが唯一の言い訳ですが、こんなものは科学とはいえない。2020年6月3日の記事の再掲です。

新型コロナが一段落し、緊急事態宣言の検証が始まっている。そのコアとなった「8割削減」を提唱した西浦博氏は、ニューズウィーク日本版で、基本再生産数Ro=2.5という想定は「今でも高すぎるとは思っていない」という。

この時間軸が不明だが、彼は2020年3月の専門家会議では、Ro=2.5で感染が拡大すると、60日で人口の79.9%、つまり約1億人が感染すると予言している。その0.4%が死亡すると、42万人になる計算である。

2020年3月の専門家会議資料より

予言がはずれた原因について、彼は「死亡者の被害想定は、あくまで「流行対策を何もしない」という仮定の下で計算した丸腰の数字」であり、日本の現実にそのまま適用できないという。

日本の自粛はロックダウンより効果が大きかったのか

では何もしないと42万人になるはずの死者が、何をしたから900人になったのか。彼もそれには答えていないが、丸腰のRoが2.5で、それを減らす要因が(自粛やロックダウンなどの)流行対策だけだとすると、実効再生産数Rtは次のようになる。

Rt=Ro(1-p)

ここでpは流行対策の効果を示すパラメータで、pが大きいほどRtは小さくなり、Ro=2.5とすると、p>0.6のときRt<1になって流行は収束する。日本のコロナ感染率は欧米の1/50~1/100なので、そのpはヨーロッパよりはるかに大きかったことになる。日本の自粛はロックダウンのような法的拘束力がなかったが、その効果は強かったのだろうか。

各国の交通機関の移動量の変化(Apple Mobility Report)