市街地からは離れた場所にある原子力発電所での放射能事故は避難のしようもあるが、誰も気づかないまま街中で起きる放射能事故は対処のしようもない。悲惨なことにそれが実際に起きたのが1987年の「ゴイアニア被曝事故」だ――。
■市街地で起きた逃れられない最悪の放射能事故
1987年9月13日にブラジルのゴイアニア市にある民間の放射線治療研究所が移転作業中に医療機器を置き忘れる事態が起きた。それはセシウム137が使われている放射性医療機器で、設置場所などを当局に報告することが義務付けられていたが、面倒を嫌ったためか所員らは報告していなかった。
建物の解体中、現場に残っていたこの機器を発見した若者はこの医療機器が何であるのかわからなかったが、分解すればスクラップとして高く売れるのではないかと思い、家に持ち帰ったのだった。
若者は機器を解体しようとしたが、なかなか難しく解体屋へと持ち込んだ。解体屋は機器を解体し、危険性を知らずに青白く光る顆粒状のセシウムを興味本位で取り出して周囲に見せたり配ったりしたのだった。
これらの人々が最初に症状を示し始めたのは約5日後だった。最初は胃腸の不調の症状として始まり、放射線の影響とは認識されていなかったが、最終的に誰かがカプセルを公衆衛生局に提出した後、状況の深刻さが明らかになった。
地方行政当局はスポーツスタジアムを開放して被爆した人々の一時収容場所とし、合計で約11万2000人が検査を受け、そのうち249人が外部被爆または内部被爆をしていることが確認された。20人以上が入院し、4人が急性放射線症で死亡したのだ。
最も深刻な影響を受けた人は、約4.5~6グレイ(Gy)以上の放射線量にさらされたと推定されている。米国疾病管理予防センターによると、急性放射線症候群のリスクがあるのは0.7グレイ以上だ。
ゴイアニア被爆事故に関わった110人の血液検査結果では放射線被曝量は0~7グレイであった。セシウム被曝は投薬で治療できるが、セシウムが体組織に与えたダメージは、生存者であっても後にがんなどの病気を発症する可能性がある。
当局が認識するのが遅れていれば、さらに深刻な事態を招いていたことは間違いない。都市全体が放射能汚染されたとしてもおかしくはなかったのだ。
このような医療機器は原理的には何万年もの間、人間の生命を脅かす可能性があるため、取り扱いには厳重な注意が求められる。市街地で起きた最悪の悲劇を二度と繰り返してはならない。
文=仲田しんじ
提供元・TOCANA
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