ドナルド・トランプが米国大統領に返り咲くことになったが、前回の大統領選挙後の混乱が強烈だったため、それ以前のトランプのことを忘れている人も多いだろう。
そこで、拙著『アメリカ大統領史100の真実と嘘』(扶桑社新書)に少し手を入れて、「トランプ大統領伝」を紹介してみる。
ドナルド・トランプはドイツ移民の孫で、祖父はプファルツ州(バイエルン王国領)で生まれたフリードリヒ・トランプだ。徴兵を忌避して移民し、シアトルで飲食業などで成功してニューヨークへ移った。故郷へ戻って結婚し、再び渡米したが、スペイン風邪で亡くなっている。
父親はニューヨークの不動産業で大成功し、暴利を貪ったと批判される一方、慈善家としても知られていた。母親はスコットランド沖の離島の出身だ。兄をアルコール中毒で亡くしており、それがドナルドが飲酒しない理由のようだ。姉は裁判官をしている。
小室圭さんで有名になったフォーダム大学に2年通ったのち、不動産の専門学科があったペンシルベニア大学の経営学部(ウォートン・スクール)に転校し、1968年に経済学士号を取得した。フォーダム大学は中の上といったところだが、ウォートン・スクールは名門で早慶くらいの値打ちがある。
卒業後は父親の会社に入って辣腕ぶりを発揮し、1980年代にはレーガン大統領のもとでの好況にのって事業を拡大し、「アメリカの不動産王」といわれるようになった。本拠地とするトランプ・タワーの竣工は1983年で、娘のイヴァンカが生まれたのもこの頃だ。
1990年代前半には不調だったものの後半には持ち直し、この頃から政界進出に興味をもち、2000年の大統領選挙ではアメリカ合衆国改革党の予備選挙に立候補した。政治コメンテーターのブキャナンに敗れたが、このときはリベラルな政見だった。