東京大学を卒業後に米国の大学で博士号を取得したというXユーザが少し前、

<東大在学中、ひたすらメディアが「今は東大より海外大!」と煽りまくってて、進路間違えたかなと焦ってた 米国で研究/授業をする今になって思うが、米国トップ大に劣らない優秀な友達に囲まれ、4年間頑張れば文字通り世界中どの大学院にも行ける環境をたった年5-60万で享受でき、本当に理想郷だった>

と投稿し、話題を呼んでいる。かつてと比べて高校卒業後に海外の大学に進学する学生は増加しているが、いったん国内最難関の大学である東京大学に入学したほうが、海外留学の選択肢も増え、負担する学費を低く抑えるための各種制度を利用できるため、トータルでみると東大などの国内難関大学を経たほうが費用とキャリア形成の面でメリットが大きいという指摘もある。実際にそのような傾向があるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 高校卒業後に国内の大学ではなく海外の大学に進学する人の数は増加傾向にあり、一部の高校では珍しいケースではなくなりつつある。例えば、グローバル教育に力を入れる広尾学園高等学校の2024年度の海外大学合格者数は200人、渋谷教育学園幕張高等学校は64人におよぶ。

 米国の大学の入学審査は日本とは大きく異なる。一般的な出願方式では、大学は志願者にエッセイ、高校での成績、活動実績、推薦状、課外活動の実績、標準テスト(SAT、ACTなど)の成績、TOEFLの成績などの提出を求め、それらを総合的に評価して合否を決める。

 学費が非常に高額である点も日本と異なる点だ。日本の国立大学の授業料は学部に関係なく原則一律で年53万5800円(標準額)と文部科学省の省令により定められており、私立大学も医学部など一部学部を除けば概ね100万円台だ。一方、米国の大学の学費は大学によって大きな差があり、有名大学になると年間数百万~1000万円ほどが相場だといわれている。

「入学審査で極めて優秀と評価されれば返済不要の奨学金を得られる可能性もあるが、生活費や年数回の日本と米国の間の移動費用を考えれば、一定以上の経済力のある世帯に限られるのが実情でしょう。また、出願書類はすべて英語で記述しなければならず、何をどのレベルで用意しなければならないのかも大学ごとに調べる必要があるため、海外進学に力を入れている一部の私立高校を除けば、地方の公立高校にそのようなノウハウはないため、非常にハードルは高い。受験する学生は自分で調べたり、お金を払って民間のサポートサービスを使うことになりますが、それでも以前と比べればかなりハードルは低くなったのは事実でしょう」(大手予備校関係者)

海外大学進学は東大以上にハードルが高い

 では、一見すると遠回りにみえても、いったん東大などの国内難関大学に入学して留学を目指したほうが、高校卒業後にすぐに海外の大学に進学するよりも、さまざまな面でメリットが大きいという面はあるのか。

 大学ジャーナリストの石渡嶺司氏はいう。

「事実です。東大だけでなく、京都大学、大阪大学などの難関校では海外への留学支援のための奨学金が充実しています。加えて、海外の大学に高校卒業後すぐに進学しようとした場合、東大など難関大受験以上に手間暇がかかります。まず、受験方法が日本と海外では大きく異なります。海外だと、国にもよりますが、語学スコア、高校の成績、エッセイなどが求められます。語学スコアは4年制大学であれば実用英検だと準1級~1級程度が必要です。エッセイは英文で自己PRや志望動機などをまとめていきます。

 学費も高額です。ほとんどの日本の国立大学は初年度納付金が81万7800円で、東大は25年度から約11万円値上げすることを決め92万4960円です。私立大だと文系学部で110万円、理系学部で150万円程度です。一方、海外の大学だと、国や大学により異なりますが200万~400万円。大学によっては500万円を超えます。出願書類では、預金残高証明書を求める大学が多くあります。もちろん、日本では提出を求める大学はありません。海外の大学は成績優秀者に対しては給付型の奨学金を出します。しかし、成績がそこまで優秀でない学生に対しては高額な学費を求める傾向にあります。こうした入試制度の違いや高額な学費負担を考えれば、海外大学進学は東大以上にハードルが高いといえます。

 一方、東大などの難関大に進学すれば、留学支援を受けることができます。その点を考えれば、高校卒業後にすぐ海外大学進学を目指すよりも、手厚いサポートを受けることができて得といえます」